グループ再編やM&Aにおいて、注意すべきリスクの一つが「間接譲渡課税」です。株式譲渡や組織再編成により移転の対象となる法人が一定の地域や条件に該当する場合、当該法人の所在地国外での株式譲渡であっても、株式譲渡益に対して譲渡された株式の発行法人が支配する法人の所在地国で課税となるケースがあります(間接譲渡課税)。本稿では、間接譲渡課税の仕組みと日本企業が多く進出するアジア圏において主に留意すべき国における制度概要について解説します。
国際ビジネスにおいては、明確なコミュニケーションと異文化理解に基づく信頼関係の構築が不可欠です。とりわけ移転価格税制の分野では、日本法人と国外関連会社との取引が検証対象となるため、移転価格コンプライアンスでは日本本社と海外子会社、あるいは海外本社と日本子会社との間での国境を越えた協力が必要です。本稿では、日本の税務調査において海外の企業グループメンバーが直面しやすい実務上の課題、日本の税務当局の特徴、ならびに本邦移転価格税制における近時の注目論点について解説します。
今般、2025年11月18日付のOECDモデル租税条約のコメンタリーの改訂版が発表されました 。今回の改定においては、リモートワークに係る恒久的施設(PE)の明確化、天然資源の開発・採掘に係る活動から生ずる所得の課税方法についての代替規定の追加、条約解釈の一貫性確保、その他の改定が含まれています。本ニュースレターでは、恒久的施設に係る改定コメンタリーの中から、リモートワーク(ホームオフィス)を中心に紹介し、PE認定の新たな方向性を検討します。
2025年9月12日、リヒテンシュタイン財団を通じて外国法人の株式を保有するとみられる場合にCFC税制の適用を認めることとする判決が東京地裁にて出ました。こちらの判決については一般メディアでも報道されており 、外国の事業体を通じたタックスプランニングに対する影響が注目されるところです。
国子会社からの配当が外貨で行われた場合の子会社簿価減額特例の適用免除基準(2,000万円基準)における外貨換算方法について、国税庁の質疑応答事例 が追加され、実務上の取扱いが明示されました。本稿では外国子会社から外貨建ての配当を受領するにあたり留意すべき項目とその外貨換算方法についてまとめます。
グローバル・ミニマム課税制度のうち、令和5年度税制改正により法制化された所得合算ルール(IIR)が、令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度より適用されています。特定多国籍企業グループ等に属する内国法人は、3月決算法人の適用初年度である令和7年3月期、また、12月決算法人の適用初年度である令和7年12月期においては、日本法令によるIIRとともに、海外子会社がその所在地国法令により適用される国内ミニマム課税(QDMTT)も併せて対応が必要となります。ただ、本制度における国別実効税率及び国際最低課税額の計算、また、各国又は地域における自国内最低課税額の計算は煩雑であるため、セーフ・ハーバーの適用によりこれらの計算が不要となる場合は、事務負担の大幅な軽減につながることから、特に適用初年度は、セーフ・ハーバーの適用にあたり慎重に検討し、適正な判断が求められます。適用初年度の申告・納付期限は、3月決算法人が令和8年9月末、12月決算法人が令和9年6月末となりますが、セーフ・ハーバーの適用に係る主な留意点について確認します。
わが国は、156の国・地域との間に合計88本に上る租税条約等を締結・適用しております(2025年10月時点)。租税条約は、国際取引における課税管轄の明確化による二重課税・租税回避の防止などを通じて、健全な国際投資・経済交流を促進することが目的です。しかし実務的には、企業が進出先の新興国において租税条約に反する課税を受ける事例や、租税条約の減免手続きの事務コストが大きいために減免の適用を受けることが困難な事例があります。このように、租税条約の適用を受けられずに課税された外国税額については、外国税額控除制度の適用を受けることもできないため、取扱いに留意が必要です。
国税庁は2025年6月、「移転価格税制の適用に係る簡素化・合理化アプローチに関するFAQ」を公表しました。本FAQは、OECD・G20の「BEPS包摂的枠組み」で合意された「利益B」に対する日本の対応や実務上の留意点を整理したものです。利益Bとは、販売会社の国外関連取引のうち一定の基準を満たすものについて、移転価格税制の適用を簡素化・合理化する仕組みを指します。日本では利益Bの導入を見送る方針が示されていますが、国外関連者の所在国で制度が導入される可能性もあります。本稿では、利益B導入の背景と目的、そして国税庁が公表したFAQのポイントを解説します。
デジタル経済下の課税をめぐっては、消費税では国外事業者への課税やプラットフォーム課税が導入され対応が進む一方、法人税ではOECDの議論を経てグローバルミニマム課税(Pillar1・Pillar2)の導入へと収束しました。我が国でもPillar2は導入済みですが、Pillar1は多国籍協定の合意に至らず導入時期は不透明です。 グローバルミニマム課税は、国家間の所得配分の歪みを補正するメカニズムであり、PEの存否に依拠した課税は、現行の法人税法における外国法人課税にそのまま残っています。外国法人はPEを通じて事業を行わない限り、その所得は日本で課税されず、PEの有無は納税義務を判定する上で重要な役割を果たしています。 本稿では、現行法人税法におけるPE課税の概略と限界について解説します。
2025 年、トランプ大統領の再登板により、米国の通商政策は大きな転換点を迎えています。特に注目されているのが、関税政策の強化です。今回はGrant Thornton の米国メンバーファームであるGrant Thornton Advisors LLC によるレポートをもとに、米国関税政策の動向ついて整理します。
輸出物品販売場制度は、外国人旅行者向けの免税制度であり、2024年9月30日時点の輸出物品販売場数(以下「免税店」といいます。)は全国で61,392店と過去最大と、インバウンド消費拡大の重要な政策ツールとして位置づけられています。その一方で、不適切な免税販売や免税購入した者による不正な横流し等が問題とされてきました。そのため、令和7年度税制改正において、輸出物品販売場制度は、不正利用を排除しながら免税店が不正排除のために負担を負うことがないよう見直され、令和8年11月1日からリファンド方式に移行することとなりました。本ニュースレターでは、現行制度と改正後の制度の変更点を比較し、制度開始までに免税店を経営する事業者に求められる対応と留意点について解説します。
多国籍企業では、国際的な合併・買収(クロスボーダーM&A)を契機として、無形資産の国際的移転や、機能・リスク・資産の変化を伴うサプライチェーン再編が行われることがあります。こうした取引が生じた場合には、既存の移転価格ポリシーの見直しが不可欠です。特に無形資産の評価については、税務当局との見解の相違が生じやすいため、将来の税務調査に備えて、取得時の価値を適切に分析・文書化しておくことが重要です。本稿では、移転価格目的と財務報告目的における評価の違いに焦点を当て、税務リスクへの備えとして経営陣が取るべき対応を考察します。
マイナンバーカードと健康保険証の一体化を進める政府の方針に基づき、2024年12月2日に健康保険証が廃止されました。当該指針は1年間の経過措置期間があり、2024年12月2日~2025年12月1日の1年間は発行済みの健康保険証が利用できます。2024年12月2日以降は、健康保険証の新規発行は行われないため、2024年12月2日以降はマイナンバーカードの保有者には、同カードの健康保険証利用を申請・登録する(いわゆるマイナ保険証登録)、またはマイナンバーカードの非保有者には「資格確認書」が交付される運用となります。しかしながら上記の運用は日本に居住しており、日本の健康保険制度に継続加入をしている者を前提とした説明となります。そのため海外で居住しており、日本の健康保険制度に継続加入をしている者の説明としては十分ではありません。上記の背景から本ニュースレターでは、海外転出者のマイナンバーカード継続利用及び日本の健康保険制度の継続加入者の取扱いについてそれぞれ解説します。
先月、ゲーム配信を手がける香港法人に対し、東京国税局が約18億円の消費税額を追徴課税したとの報道がありましたが、ゲーム、アプリ、電子書籍、音楽配信などのデジタルプラットフォームを利用した電気通信役務提供取引の課税関係について、先般の税制改正にも簡単に触れながら整理してみたいと思います。
新聞報道等によれば、G20において議長国のブラジルの主導によるビリオネア(10億米ドル(1米ドル=155円換算で1,550億円)以上の資産を有する者)課税強化に向けた合意を目指していましたが、米国大統領にトランプ氏が当選し、同氏と近い関係にあるとされるアルゼンチンのミレイ大統領の反対等により、2025年11月以降、議論は停止した状況となっているとされています。日本においてはほとんど報道されていませんが、(超)富裕層への課税強化の議論は、経済学、南北問題、地球温暖化、BEPS 2.0の諸問題と複雑に関連しているため、今後かなりの時間(数十年単位)をかけて議論されていく可能性があります。(超富裕層)個人に対するいわゆるグローバルミニマム課税自体の合意は当面は困難のようですが、各国の個人課税に影響を与える可能性はありそうです。
消費税計算においては、課税期間中の売上税額から一定の仕入税額を控除することにより納付税額を計算することになりますが、国外取引において控除される仕入税額に関し、事例を用いて留意すべき点について確認したいと思います。
