海外子会社税務ガバナンス~諸外国における繰越欠損金~
多国籍企業グループが直面するグローバル税務コンプライアンスに対応するためには、本社主導による税務ガバナンスの構築が強く求められます。海外子会社税務ガバナンスを推し進める上では、各国の基本税制の理解はその一歩となります。本稿では、日系企業の進出先となるケースの多い諸外国を中心に、タックスプランニングや実効税率(ETR)管理において重要な「諸外国の繰越欠損金の原則的な取り扱い」について整理します。
2025/11/20 読了時間 6 分

グローバル・ミニマム課税制度のうち、令和5年度税制改正により法制化された所得合算ルール(IIR)が、令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度より適用されています。特定多国籍企業グループ等に属する内国法人は、3月決算法人の適用初年度である令和7年3月期、また、12月決算法人の適用初年度である令和7年12月期においては、日本法令によるIIRとともに、海外子会社がその所在地国法令により適用される国内ミニマム課税(QDMTT)も併せて対応が必要となります。ただ、本制度における国別実効税率及び国際最低課税額の計算、また、各国又は地域における自国内最低課税額の計算は煩雑であるため、セーフ・ハーバーの適用によりこれらの計算が不要となる場合は、事務負担の大幅な軽減につながることから、特に適用初年度は、セーフ・ハーバーの適用にあたり慎重に検討し、適正な判断が求められます。適用初年度の申告・納付期限は、3月決算法人が令和8年9月末、12月決算法人が令和9年6月末となりますが、セーフ・ハーバーの適用に係る主な留意点について確認します。
本特例は、令和6年4月1日から令和8年12月31日までの間に開始する対象会計年度(令和10年6月30日までに終了するものに限る。)において、①デミニマス要件、②簡素な実効税率要件、③通常利益要件のいずれかを満たす場合には、その対象会計年度のその構成会社等の所在地国におけるグループ国際最低課税額をゼロとみなす制度で、国又は地域ごとにその適用可否の判定を行います(令5改正法附則14①)。法人税法の経過措置として、3月決算法人は令和7年3月期から令和9年3月期のみ、また、12月決算法人は令和7年12月期から令和8年12月期のみ適用可能となりますが、適用にあたっては、使用する国別報告事項(CbCR)のデータ等に関して、以下の点に留意が必要です。
1 令和6年4月1日から同年12月31日までの間に開始する対象会計年度は15%、令和7年1月1日から同年12月31日までの間に開始する対象会計年度は16%とする。
特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等が日本以外の国又は地域において自国内最低課税額に係る税を課することとされている場合において、その自国内最低課税額に係る税が①QDMTT会計基準及び②整合性基準のいずれの要件も満たすときは、その対象会計年度のその構成会社等の所在地国に係るグループ国際最低課税額をゼロとする制度、いわゆるQDMTTセーフ・ハーバーが、令和6年度税制改正において措置されました(法法82の2⑥)。
自国内最低課税額に係る税に関する法令が、次のいずれかの要件を満たすものであること。
イ 最終親会社等の連結等財務諸表の財務会計基準により構成会社等の当期純損益金額を計算することとされていること。
ロ 構成会社等の所在地国において一般に公正妥当と認められる会計処理基準(所在地国等財務会計基準)により構成会社等の当期純損益金額を計算することとされていること(その所在地国の全ての構成会社等が所在地国等財務諸表を作成しており、その作成期間が最終親会社等の対象会計年度と同一である場合に限る)。
自国内最低課税額に係る税に関する法令が、常にGloBEルールに比して同等以上の税負担が生じると認められるものを除き、GloBEルールと同様に計算するものであること。例えば、自国内最低課税額の計算において、実質ベース所得除外額の規定が設けられていない又はGloBEルールより厳しい、収入金額等に関する適用免除基準の規定が設けられていない又はGloBEルールより厳しい、最低税率が15%超であるなどの乖離は、整合性基準を満たすこととされます。(Q15(1))
上記セーフ・ハーバーとは別に、恒久的制度である適用免除基準(デミニマス除外)が設けられており、国又は地域ごとに、①収入金額要件(一定の収入の3年平均額が1,000万ユーロ未満)と②所得金額要件(一定の所得の3年平均額が100万ユーロ未満)のいずれも満たす場合に、特定多国籍企業グループ等報告事項等で本特例の適用を選択することにより、その国又は地域における当期国別国際最低課税額をゼロとします(法法82の2⑦➉)。なお、本適用免除基準は、年次での選択適用となり、共同支配会社等については、別途計算して判定します。
[2] 「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税に関するQ&A(令和7年10月改訂)」-令和6年4月1日から令和7年3月31日までの間に開始する対象会計年度対応分-(国税庁 令和7年10月31日公表)
[4] OECD, “Central Record of Legislation with Transitional Qualified Status”, 2025年11月20日取得
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