インドにおける海外資産申告制度の概要と留意点
国際税務ニュースレターCRS等による各国税務当局間の情報交換が進むなか、海外資産に関する税務コンプライアンスの重要性が高まっています。本稿では、日系企業の進出が拡大するインドにおける海外資産の申告制度について、概要や対象資産、未申告時の罰則等を解説します。

グループ再編やM&Aにおいて、注意すべきリスクの一つが「間接譲渡課税」です。株式譲渡や組織再編成により移転の対象となる法人が一定の地域や条件に該当する場合、当該法人の所在地国外での株式譲渡であっても、株式譲渡益に対して譲渡された株式の発行法人が支配する法人の所在地国で課税となるケースがあります(間接譲渡課税)。本稿では、間接譲渡課税の仕組みと日本企業が多く進出するアジア圏において主に留意すべき国における制度概要について解説します。
通常、株式譲渡や組織再編成による株式の移転に伴い譲渡益が生じる場合、当該譲渡益に係る課税は売手に対し、売手の所在地国において課税されます。しかし、国外における株式の移転であっても一定の条件に該当する場合、譲渡される法人の支配下にある法人の株式移転に係る譲渡益として、当該支配下にある法人の所在地国で課税が行われるケースがあります。これを間接譲渡課税と言います。
中国では、中国法人の親会社等が売却されることに伴い間接的に支配者に変更が生じる場合、当該取引が合理的な商業上の目的かどうかという観点で総合的に判断され、実質的に中国財産の譲渡であると認定されたときは、売手に対して譲渡益課税が生じ、中国において企業所得税の申告納付を行う必要があります。また、当該譲渡益課税の譲渡対価は時価により認識する必要があります。
例えば、グループ内の再編である場合、①80%以上の保有関係があるグループ内再編であること、
②将来の中国における税金が減少しないこと、③対価のすべてが株式で支払われることを満たすのであれば、合理的な商業上の目的があると判断されます(国家税務総局公告2015年第7号(以下、7号公告)6条)。
上記のほか、組織再編成等により中国株式を保有する主体が消滅する場合は、経済実態として国外株主による中国資産の譲渡と同等とみなされ、間接譲渡課税の対象となります。
間接譲渡課税に係る企業所得税は源泉徴収の対象となり、売手が納税義務者、買手が源泉徴収義務者となります。
インドにおいては、上記図式のように、インド国外に所在する中間持株会社の譲渡であっても、当該中間持株会社の株式の価値が実質的にインド国内に所在する資産から生じているとみなされる場合には、当該譲渡により生じた所得はインド源泉所得としてインドで課税対象となります。
具体的には、中間持株会社が下記の状況にある場合には、その株式の価値は実質的にインド国内に所在する資産から生じているものとみなされます。
中国と同様に、間接譲渡課税に係る法人税は源泉徴収の対象となり、売手が納税義務者、買手が源泉徴収義務者となります。
国際取引においては、二国間における二重課税を排除する目的で、多くの国の間で租税条約が締結されています。租税条約が有利となる場合には、国内法に優先して課される税が軽減又は免除されます。間接譲渡課税により課される譲渡益については、手続きを行うことにより軽減又は免除を受けられる可能性があります。日本法人が売手となる場合には、下記租税条約の規定があります。
日印租税条約では、日本居住者がインド国外法人の株式を売却したことにより得た譲渡益に対して課される法人税については、売手である日本における課税権が認められており、インドの課税権はないものとされます。しかし、BEPS 防止措置実施条約12第9条4の適用により、2020年4月1日以降については、日本居住者が保有する株式又は持分の価値の50%を超える部分がインドに所在する「不動産」によって直接又は間接に構成される場合には、間接譲渡によって生じた所得についてインドにも課税権が認められていますので、不動産を多く有している場合等には留意が必要です。
中国にあっては、譲渡益課税について日中租税条約の適用があったとしても、譲渡前12ヶ月以内のいずれかの時点で、その会社の株式の25%以上を保有していた場合等には中国にも課税権が認められるため、M&Aの文脈では国内法に準じた課税が行われるケースが多くみられます。
CRS等による各国税務当局間の情報交換が進むなか、海外資産に関する税務コンプライアンスの重要性が高まっています。本稿では、日系企業の進出が拡大するインドにおける海外資産の申告制度について、概要や対象資産、未申告時の罰則等を解説します。
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