リヒテンシュタイン財団を通じて外国法人の株式を保有するとみられる場合のCFC税制についての裁判例
国際税務ニュースレター2025年9月12日、リヒテンシュタイン財団を通じて外国法人の株式を保有するとみられる場合にCFC税制の適用を認めることとする判決が東京地裁にて出ました。こちらの判決については一般メディアでも報道されており 、外国の事業体を通じたタックスプランニングに対する影響が注目されるところです。

今般、2025年11月18日付のOECDモデル租税条約のコメンタリーの改訂版が発表されました[1]。今回の改定においては、リモートワークに係る恒久的施設(PE)の明確化、天然資源の開発・採掘に係る活動から生ずる所得の課税方法についての代替規定の追加、条約解釈の一貫性確保、その他の改定が含まれています。本ニュースレターでは、恒久的施設に係る改定コメンタリーの中から、リモートワーク(ホームオフィス)を中心に紹介し、PE認定の新たな方向性を検討します。
※ このニュースレターは2026年1月10日現在において得られる情報により作成されています。
今回のPEに係るコメンタリーの改定は、モデル条約自体の改定がなされ、それを受けた改定ではなく、従来から議論のあった論点につき、より具体的に踏み込んだコメントがなされたものです。リモートワーク(ホームオフィス)については形式より企業との関係性等のより実体を重視した判定をすることが推奨されています。その意味では、全世界的に今後PE課税の強化が予想されます。
モデル租税条約のコメンタリーの改定については、発効という概念がないため、改定されたコメンタリーについては、直ちにOECD加盟国各国の課税当局に採用される可能性がありますので、注意が必要です。さらに、今回のコメンタリーは、既存の論点の明確化という性格も有しますので、更正可能な過去のPE認定にも適用され得るものとなります。リスクの度合いに応じて、これを機会に関係各国のPE認定の可能性について再検討することも視野に入れるとよいでしょう。
企業の従業員等がその企業の所在地以外の国において、自宅その他の場所において勤務又はその企業の業務を行っている場合にそれが企業の恒久的施設(PE)になるかが、コロナ流行以後、重要な税務論点となっています。
改定前のコメンタリーにおいては、ホームオフィスの使用は原則として断続的、付従的であり、多くの場合にはPEに該当しないであろうとされていました。その上で、その個人が自宅において企業の業務を行う場合で、明らかにその個人の自宅を企業が自由に処分できる場合を除き、PEとなるか否かを慎重に判断すべきとされていました。例えば、その従業員の勤務の性質から事務所が必要な場合においても、企業がその従業員のための事務所を提供せず、その従業員が自宅をホームオフィスとして使用しているときには、原則としてその従業員の自宅を企業の自由に処分できる場所となるであろう、すなわちPEに認定することは妥当であろうとしていました。どちらかというと、PE認定には(物理的な)場所の認定に重きがあった印象です[2]。
しかしながら、この改定前のコメンタリーは、今般の改定によりその全文が削除され、新たなコメンタリーが追加されています。
今回のコメンタリーの改定では、従業員等のホームオフィスだけでなく、別宅やいわゆるバケーションレンタル、その他従業員等が使⽤する場所もPEとなる一定の場所としています[3]。改定コメンタリーにおけるPE認定の重要な判断基準としては、以下のように記述されています。PE認定に「商業的理由」の有無を判断要素として導入した点は、機能的側面を重視する方向性を示すものと考えられます。
上記の判断要素については、これらの基準に該当する場合でも、機械的にPEとなるという訳ではありません。関連する事実及び状況を総合的に勘案して最終的にPEとなるか否かを判断することとなっています。改定後のコメンタリーは一定の方向性は示していますが、判断余地をかなり残していますので、今後は税務当局と企業の間で見解相違となるケースは頻発するように思われます。
自然鉱物から生ずる収益は一定の開発途上国には非常に重要な税源となるため、自然鉱物の探索・開発については、従来のOECDモデル条約を踏襲せず、関係する二国間の合意により、別途規定を設けることを今回の改定コメンタリーにおいては認めています。オフショアの探索・開発については、陸上にある一定の場所を通して探索・開発又はそれらの関連サービスの提供が行われていないことが多いため、従来のPEに該当しない事例が多かったと考えられます。このような状況を一定の資源国は課税権の喪失と考えているため、本件コメンタリーの改正がなされたと考えられています。新たな探索・開発に係る規定の導入には、二国間による租税条約の改定又は新たな締結を必要としますので、このコメンタリーの改定は直ちには影響しませんが、自然鉱物の探索・開発に携わる企業は、今後の動向に留意すべきでしょう[4]。
今回のOECDモデル租税条約コメンタリー改定により、本社所在国以外の国で企業の業務を行う従業員等の自宅等において当該企業の業務を行うことにつき、商業的理由があるか否かという判断基準が導入されたことには、特に注意すべきでしょう。いわゆるセーフ・ハーバーとして、12か月の期間のうち、その従業員等の総労働時間の50%を超えて業務が提供されているか否か、という基準が導入されていますが、あくまでもPE認定は関連する事実と状況により総合的な判断がなされることに留意しなければなりません。
このような従業員等が、国外において企業の業務提供を行っている場合、今回の改定を機にPEリスクを再検討すべきかも知れません。改定されたコメンタリー自体は、事実認定により変動する判断基準が多く見られますので、その国の税務当局のPE課税の運用方針の動向にも注意する必要があります。
さらに、PEを認定されると、どのPEにどの程度の所得を割り当てるかという移転価格の問題も発生しますので、付加価値の高い業務を行っている場合には、さらなる注意が必要となります。
[1] OECD, ”THE 2025 UPDATE TO THE OECD MODEL TAX CONVENTION”(2025年OECDモデル条約改定), 2026年1月10日現在取得
[2] 改定前コメンタリー 18、19参照
[3] 改定コメンタリー パラグラフ44.1~44.21参照
[4] 改定コメンタリー パラグラフ47、170~201参照
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グローバル・ミニマム課税制度のうち、令和5年度税制改正により法制化された所得合算ルール(IIR)が、令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度より適用されています。特定多国籍企業グループ等に属する内国法人は、3月決算法人の適用初年度である令和7年3月期、また、12月決算法人の適用初年度である令和7年12月期においては、日本法令によるIIRとともに、海外子会社がその所在地国法令により適用される国内ミニマム課税(QDMTT)も併せて対応が必要となります。ただ、本制度における国別実効税率及び国際最低課税額の計算、また、各国又は地域における自国内最低課税額の計算は煩雑であるため、セーフ・ハーバーの適用によりこれらの計算が不要となる場合は、事務負担の大幅な軽減につながることから、特に適用初年度は、セーフ・ハーバーの適用にあたり慎重に検討し、適正な判断が求められます。適用初年度の申告・納付期限は、3月決算法人が令和8年9月末、12月決算法人が令和9年6月末となりますが、セーフ・ハーバーの適用に係る主な留意点について確認します。
2025年9月12日、リヒテンシュタイン財団を通じて外国法人の株式を保有するとみられる場合にCFC税制の適用を認めることとする判決が東京地裁にて出ました。こちらの判決については一般メディアでも報道されており 、外国の事業体を通じたタックスプランニングに対する影響が注目されるところです。
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わが国は、156の国・地域との間に合計88本に上る租税条約等を締結・適用しております(2025年10月時点)。租税条約は、国際取引における課税管轄の明確化による二重課税・租税回避の防止などを通じて、健全な国際投資・経済交流を促進することが目的です。しかし実務的には、企業が進出先の新興国において租税条約に反する課税を受ける事例や、租税条約の減免手続きの事務コストが大きいために減免の適用を受けることが困難な事例があります。このように、租税条約の適用を受けられずに課税された外国税額については、外国税額控除制度の適用を受けることもできないため、取扱いに留意が必要です。