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ミニマムタックスを考慮したオーナー企業M&Aにおける役員退職金支給の活用

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2025年に導入されたばかりのミニマムタックスが、導入僅か3年目の2027年から強化され、従来の「超」富裕層向けの規定が、富裕層向けの規定に拡大されます。これにより、M&Aで自社株式を売却するオーナーにとっては、大きな影響を受けるケースが出てきます。さらに、ミニマムタックスの影響により、株式譲渡対価の代わりにオーナーへ役員退職金を支給する、いわゆる退職金スキームが、従来よりも優位性が高くなってきます。本稿では、ミニマムタックスを考慮したオーナー企業M&Aにおける役員退職金支給の活用方法について解説します。

ミニマムタックスの仕組み

ミニマムタックスとは、2025年から導入された「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」のことで、基準所得金額が 3.3 億円超の納税者に対し、3.3 億円控除後の所得に対する所得税額の割合が 22.5%を下回る場合、22.5%との差分を追加課税する仕組みとなっています。そして、2026年の税制改正により、2027年からは、このミニマムタックスが強化され、基準所得金額が 1.65 億円超の納税者に対し、1.65億円控除後の所得に対する所得税額の割合が 30.0%を下回る場合、30.0%との差分を追加課税することになっています。

この基準所得金額とは、通常の所得税の申告対象となる給与所得、事業所得、不動産所得、退職所得、株式・不動産の譲渡所得といった所得金額のほか、申告不要とした上場株式等に係る配当所得等、一般株式等に係る少額配当の配当所得、源泉徴収ありの特定口座の上場株式等に係る譲渡所得等を加えて算出します。給与所得、事業所得など総合課税(所得税率 0%~45%の累進税率)が適用される所得が高額な場合、ミニマムタックスを気にする必要はないですが、株式・不動産の譲渡所得などの一律の税率(15%など)が適用される分離課税の所得が高額で、全体の所得に占める割合が高い場合には、注意が必要です。仮に、年間の所得が株式譲渡所得(所得税率15%)のみの場合、2025年~2026年では、所得が約9.9億円以上、2027以降では所得が約3.3億円以上で、ミニマムタックスによる追加課税を受けることになります。

オーナー企業を買収する場合の役員退職金支給の活用

オーナー企業を買収する場合、株式譲渡対価の一部について、譲渡対価の代わりにオーナーへの役員退職金として支給するケースがよくあります。これは、役員退職金は勤続年数に応じた退職所得控除を控除した後の金額に2分の1を乗じて退職所得が計算されることで、結果として、株式譲渡益課税(所得税率15%、復興所得税・住民税を合わせて20.315%)よりも、税負担が軽減される場合があるからで、退職金スキームと言われています。

ここで設例を見てみましょう。

ミニマムタックスにおける退職金の位置づけ

ミニマムタックスの導入後は、上述の退職金スキームが、より効果的になるケースが出てきます。これは、退職金が、勤続年数に応じた退職所得控除額を控除した後の金額に2分の1を乗じた金額が退職所得として計算されることから、退職金額に対する所得税の負担率が最大で22.5%弱(所得税の累進税率の最高税率45%の2分の1)となる一方で、退職所得に対する所得税の負担率は最大で45%弱(累進税率の最高税率)と高くなることから、ミニマムタックスによる影響は受けないことになるからです(少額の退職金支給の場合を除きます)。

ここで設例を見てみましょう。

お見逃しなく!

退職金スキームは、ミニマムタックスの影響で、従来よりも優位性が高くなっており、今後、オーナー企業を買収するM&Aにおいては、これまで以上に、積極的に採用される可能性が高いと思われます(もちろん、2026年中はミニマムタックス強化前の駆け込みのM&Aが増えることも予想されます。)。しかし、役員退職金については、後々、支給額が過大であるとして否認された場合、すなわち過大退職金となった場合には、過大部分が損金不算入とされ、被買収会社に追徴課税といった事態に発展します(過大退職金となったとしても、オーナー個人は、「退職により一時に受ける給与」に該当する限り、退職所得として取り扱われるため、追徴課税は発生しません。)。

ミニマムタックスの導入など、税制は年々、複雑化しており、簡単にシミュレーションすることも難しくなっていますが、オーナーの手取額の最大化だけに着目して、安易に高額な役員退職金を支給するのではなく、M&A関連の税制やストラクチャリングに詳しい専門家を交え、慎重にM&Aストラクチャーを決定していく必要があると思われます。

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