インドにおける海外資産申告制度の概要と留意点
国際税務ニュースレターCRS等による各国税務当局間の情報交換が進むなか、海外資産に関する税務コンプライアンスの重要性が高まっています。本稿では、日系企業の進出が拡大するインドにおける海外資産の申告制度について、概要や対象資産、未申告時の罰則等を解説します。

先月、ゲーム配信を手がける香港法人に対し、東京国税局が約18億円の消費税額を追徴課税したとの報道がありましたが、ゲーム、アプリ、電子書籍、音楽配信などのデジタルプラットフォームを利用した電気通信役務提供取引の課税関係について、先般の税制改正にも簡単に触れながら、以下のとおり整理してみたいと思います。
※ 本稿は報道内容に基づいて執筆しており、筆者は報道以外の事実関係については承知しておりません。そのため、記載内容が事実関係と相違する場合があることを、あらかじめお断りさせていただきます。
報道内容によりますと、課税を受けたのは、スマートフォン向けのゲームなどの配信を行っている香港法人であり、そのゲームは世界各国に配信されているオンラインゲームであり、ゲーム内で日本国のユーザーがアイテムを購入するなどの際に課金がなされていましたが、この課金にかかる消費税について、日本国内で申告を行っていなかったため、東京国税局から消費税額約18億円について、追徴課税の処分を受けたとのことです。
香港法人は、このゲーム配信については、シンガポール法人が運営するデジタルプラットフォームを利用して全世界に配信していたとされており、東京国税局は、日星租税条約に基づき、シンガポール政府に対し、グループリクエストなどの手法による情報提供要請を行うなどして、この香港法人が日本国内ユーザーに対して、3年間で約150億円を売り上げていたことを突き止め、追徴課税処分に至ったとのことです。
これに加えて、東京国税局に対する調査非協力や、日本国内に納税管理人を指定していないことなど諸々の状況を検討した結果、適正な納税が見込まれないとの判断から、東京国税局は納期限を繰り上げて、香港法人が日本子会社に対して有する債権についての差し押さえを行ったと報じられています。
国外事業者等によって提供される、インターネット等を通じて行われるクロスボーダーでの一般消費者向けデジタルコンテンツ配信などのサービスについて、平成27年度税制改正により、消費税の役務提供地における内外判定は、「役務提供者の所在地」から「役務提供を受ける者の所在地」によって判定されるルールに変更となったことで、日本国内向けに行うクロスボーダーでの消費者向け電気通信利用役務の提供について、国外事業者は消費税の納税義務を負う、いわゆる国外事業者申告納税方式によることとされました(これとは別に事業者向け電気通信利用役務の提供のケースでは、一定の要件を充たす場合にリバースチャージ方式の適用により、取引を行った国内事業者に納税義務が転嫁されます)。
これにより、国内事業者が、国外事業者から消費者向け電気通信役務提供を受けた場合には、その課税仕入れに係る消費税については、登録国外事業者制度に登録した国外事業者(日本において課税事業者として登録)からの役務提供でない限り、仕入税額控除をすることができなくなりました。
さらにこの登録国外事業者制度は、令和5年10月にインボイス制度にそのまま移行する形となったため、登録の取り消しを求めない限り、適格請求書発行事業者としての位置付けとなり、インボイス番号を記載した適格請求書を交付し、取引事業者はその適格請求書を保存する場合に限り、仕入税額控除を行うことができることとされました(消基通11-1-3)。
この事案では、ゲーム配信を行うためのプラットフォームがシンガポール法人によって運営されていましたが、国税庁がシンガポール税務当局に対して、日星租税条約26条により、このプラットフォームを利用する法人の情報をまとめて情報提供要請(グループリクエスト)を行ったところ、香港法人がこのプラットフォームを利用していたことを把握し、諸情報の分析の結果、香港法人の日本国内での売上額などの状況を把握することが可能となった模様です。
通常の情報交換要請においては、対象法人を具体的に特定して、その法人についての情報提供を要請するのが一般的ですが、今回は「グループリクエスト」という情報交換制度上の仕組みを利用しての情報提供要請がなされたようです。
この「グループリクエスト」については、国税庁が発遣している「租税条約等に基づく相手国等との情報交換及び送達共助手続について(事務運営指針)」において、「グループリクエストとは一定のグループに属する複数の納税者で個々に本人の特定ができない者(納税者グループ)に関する情報提供要請をいう。」としており、具体的な対象者が特定できなくとも、一定の要件を充たした場合には納税者グループに所属する者をまとめて情報提供の要請が可能となる旨がこの事務運営指針によって示されております。
事実関係の詳細は報道の範囲で知る限りですが、納税者が納税管理人を定めないでこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるとき等の場合には、納付すべき税額の確定した国税でその納期限までに完納されないと認められるものがあるときは、その納期限を繰り上げ、その納付を請求することができる(国税通則法38条1項5号)ことに加えて、徴収保全の観点から、法定申告期限前に、その確定すると見込まれる国税の金額のうちその徴収を確保するため、あらかじめ、滞納処分を執行することを要すると認める金額を決定し、直ちに納税者の財産の差押えを行うことが認められています(同条3項)。
この繰上保全差押えについては、納税義務の成立後に、未確定の国税について、法定申告期限前に徴収保全の措置として、納税者の財産に対して差押え処分をすることができる規定となっております。
令和6年度税制改正をうけ、令和7年4月1日以降に国外事業者が特定プラットフォーム事業者を介して対価を収受する消費者向けの電気通信役務提供については、この特定プラットフォーム事業者が、役務提供を行ったものとみなして、消費税の申告納税を行うこととなりました(消費税法15条の2)。
さきほどの事例をこの改正にあてはめますと、プラットフォーム事業を行うシンガポール法人が、一定要件を充たして特定プラットフォーム事業者に該当する場合、消費税の納税義務が香港法人からシンガポール法人に移ることになるものと考えられます。この税制改正により、特定プラットフォーム事業者として申告義務を有する法人に該当するかどうかは、課税期間内において、プラットフォームを利用している国外事業者が、そのプラットフォーム事業者から50億円超の売上対価相当額の収受がある場合に国税庁長官により指定されるため、該当する法人は一定程度に限定されると思われますが、該当する際には納税義務者が従来と変更となることに留意が必要かと思われます。
なお、先ほどの事例においてシンガポール法人が特定プラットフォーム事業者に該当しない場合には、これまでと同様に申告義務は香港法人が有するものと考えられますので、申告義務を検討する場合には、プラットフォーム事業者、利用する国外事業者の取引状況などを併せて検討する必要があるものと考えられます。
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