最高裁判決後の米国関税の動向
国際税務ニュースレター米連邦最高裁判所は2026年2月20日、国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠とするトランプ政権の追加関税(IEEPA関税)を違法と判断しました。これを受けて米国際貿易裁判所は2026年3月4日、米税関・国境取締局に対し、IEEPA関税の還付を命じました。 本稿では、IEEPA関税の発動から還付に至るまでの経緯を整理し、還付のプロセスおよびIEEPA関税の代替措置について解説します。
2025/08/27 読了時間 4 分

デジタル経済下における課税の問題は法人税の問題と消費税の問題があります。消費税の問題は、OECDにおける議論を経て、国外事業者が行う電気通信利用役務の提供についての課税やプラットフォーム課税が導入され対応が行われています。
法人税について、OECDでは、デジタル経済下では恒久的施設(PE)の存否に依拠した課税には限界があるため、PE概念を拡張する、PEによらない経済的な結びつき(nexus)概念を導入する等の議論が進められましたが、そのような方向で議論はまとまらず、グローバルミニマム課税(Pillar1、Pillar2)の導入という方向で収束しました。Pillar2は、令和5年税制改正において我が国にも導入されましたが、Pillar1(「利益A(Amount A)」の市場国への配分)は多国籍協定の合意がされておらず、導入の時期は不透明です。
グローバルミニマム課税は、国家間の所得配分の歪みを補正するメカニズムであり、PEの存否に依拠した課税は、現行の法人税法における外国法人課税にそのまま残っています。外国法人は恒久的施設(PE)を通じて事業を行わない限り、その事業から生ずる所得についてわが国で課税されることはなく、PEの有無は外国法人の納税義務の有無を判定する上で重要な役割を果たしています。
本稿では、現行法人税法におけるPE課税の概略と限界についてご説明します。
法人税法上、PEは、①事業拠点型PE(事業活動が継続的に行われる「一定の場所」が対象。保管・展示・引渡しの施設でも準備的・補助的でない場合はPEに該当する。)、②建設PE(契約を分割しても実質的に1年を超えて行われる建設・据付工事やその監督業務を行う場合その事業はPEを構成する。)、③代理人PE(日本国内で非居住者のために契約を締結する権限を有する者、または契約締結のために主要な役割を果たす者。通常の方法で業務を行う第三者「独立代理人」は除外する。)の3つの種類に区分されています(法法2十二の十九)。
外国法人がPEを通じて日本で事業を行う場合において、PEが外国法人から独立して事業を行う事業者であるとしたならば、PEが果たす機能、PEにおいて使用する資産、PEと外国法人の本店との間の内部取引その他の状況を勘案して、PEに帰属されるべき所得が国内源泉所得とされます(法法138①)。
なお、現行法のPEの規定は、2015年のOECDのBEPS行動計画7「恒久的施設(PE)認定の人為的回避の防止」に沿って代理人PEの定義の拡張や準備的・補助的の制限がなされ、PEの範囲が若干拡張されています。
2024年2月に日本公認会計士協会が公表した「デジタル経済下におけるPE概念の課税と考察」[1]において、デジタル経済下で直面するPE概念について、クラウドサービス、越境EC、広告配信などの事例を通じて、伝統的なPE概念の問題点を分析しています。
たとえば、日本のオンラインマーケットにて、外国事業者が日本国内に事業所を設けずに国境を越えて外国製品を販売するケースがあります。このような電子商取引(E-Commerce:越境EC)を行う外国事業者は、日本にあるPEを通じて事業を行わない限り、その事業所得について課税はされません。電子商取引のマーケットと言えるウェブサイト自体は有形資産ではないためPEの認定対象とはなりませんが、そのウェブサイトを格納するサーバーが物理的な場所とされ、現行法では「その他事業を行う一定の場所」としてサーバーが含まれています(基通20-1-1)。同報告書は、その他、モバイルアプリケーションビジネス、在宅勤務を前提とする雇用形態という新しいビジネスモデルの分析を行っており、所得源泉地国におけるPE課税の適用と限界を分析しています。
国外事業者が日本国内に自社倉庫もしくは外国事業者が自由に行える場所を確保して商品を保管している場合、その活動が単なる準備的または補助的な活動に当たらない限り、その倉庫がPE認定されると考えられます。外国事業者がプラットフォーム事業者の倉庫に商品を預け、国内配送もその事業者に委託している場合は、倉庫が自由に利用できる場所とならないことが多いことから、倉庫がPEとして認められず、そのため日本国内で商品が販売されても国外事業者に対して日本で課税されないこととなります。
[1] 日本公認会計士協会 租税調査会研究報告第40号 2024年2月
PEの判断には国内法および租税条約の検討を要します。BEPS防止措置実施条約(MLI)第13条を受けて改正された租税条約および改正後の国内法では、商品の保管・引渡しに関して、準備的または補助的な性格のものである場合に限りPEから除外することを明示しています。しかし日本との租税条約についてBEPS防止措置実施条約第13条が適用される国は2025年6月18日時点で39か国・地域に限定されています(財務省「BEPS防止措置実施条約に関する資料」 2025年8月27日取得)。
わが国と新興国との間の租税条約においては、わが国法人税法にはないサービスPEが含まれている場合があるので、注意が必要です。
また、すでにデジタルサービスタックス(DST)を導入している国もありますが、これらの税制は法人所得税ではなく偏りがあることから、国内法や租税条約に基づく二重課税救済規定の恩恵を受けられない点が挙げられます。Pillar1ルールを適用する上で既存のDTSの撤廃が要求されることも考えられます。
米連邦最高裁判所は2026年2月20日、国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠とするトランプ政権の追加関税(IEEPA関税)を違法と判断しました。これを受けて米国際貿易裁判所は2026年3月4日、米税関・国境取締局に対し、IEEPA関税の還付を命じました。 本稿では、IEEPA関税の発動から還付に至るまでの経緯を整理し、還付のプロセスおよびIEEPA関税の代替措置について解説します。
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