インドにおける海外資産申告制度の概要と留意点
国際税務ニュースレターCRS等による各国税務当局間の情報交換が進むなか、海外資産に関する税務コンプライアンスの重要性が高まっています。本稿では、日系企業の進出が拡大するインドにおける海外資産の申告制度について、概要や対象資産、未申告時の罰則等を解説します。
2026/06/05読了時間 5 分

Public CbCR(公開CbCR)はEUやオーストラリアにおいて法案が制定されたことで本格的に導入されました 。これにより、多国籍企業グループにとってこれまでのグローバル税務コンプライアンスはより一層複雑になっています。
Public CbCR制度は、従来は税務当局間のみで交換されていたOECDのBEPSプロジェクトのAction 13に基づくCbCRのデータを、企業のウェブサイトや当局のポータルを通じて公開することを義務付けるものです。
Public CbCRやグローバルミニマム課税(GMT/第2の柱)といった、日本の多国籍企業グループが直面するグローバル税務コンプライアンスに対応するためには、現地フォーカス(decentralized)的なグローバル税務体制だけでは対応しきれないと想定されます。
海外税務リスクを減らすには、グループ全体のデータを一元管理し、情報の整合性をコントロールする本社主導による税務ガバナンスの構築が強く求められます。
EU及びオーストラリアにおけるPublic CbCRルールは、過去2期連続でグループ連結売上高が7億5,000万ユーロ(オーストラリアは10億豪ドル)を超える多国籍企業グループが適用対象となり、日本に本社があるグループであっても、EU域内に一定規模以上の子会社・拠点(中規模・大規模法人)を保有している場合や、オーストラリアでのグループ源泉所得が10百万豪ドルを超える場合は、原則として全グループのデータ開示が義務付けられます[i]。
なお、各国・地域におけるPublic CbCRの適用時期、公開期限および具体的な開示項目は、多くの場合、国ごとに異なります。
そして、開示項目には、例として以下のような差異が存在します 。
EU各国での国内法制化においても差異が存在します。例えば、商業的に機密性の高いデータを一時的に非開示にできる「セーフガード条項(Safeguard clause)」の適用が、EU指令では5年間認められている一方、ハンガリーやベルギー、ギリシャなどでは認められていません。一方で、ドイツでは5年より短い4年間の非開示が認められます。
また、上記の通り、オーストラリアのPublic CbCRルールはEUのものより厳格であり、単に財務データにとどまず、税へのアプローチ・方針や税率差異分析といった定性的な情報の開示が必要となります。
さらに、開示のデジタルフォーマット化により実務が複雑となります。EUの制度では、xHTMLおよびiXBRLを用いた機械読み取り可能なフォーマットでの電子報告が義務化されました[ii]。一方、オーストラリアの制度ではXMLフォーマットが採用されています。
このように各地域独自のルールやデジタル報告要件が加わったことで、社内リソースのみだけでPublic CbCRに対応することは困難と想定されます。
これまで海外子会社の税務を現地の顧問税理士のサポートのみで済ませていた企業グループは、リスクの高い局面に立たされています。
提出遅延や重大な誤り(material errors)に対するペナルティは厳格化しており、オーストラリアでは最大825,000豪ドル(約94百万円)の罰金[iii]が科されます。
もし、日本本社がコントロールを欠いた状態で、整合性のない税務データを公開してしまった場合、説明のつかないデータ不一致による税務リスクが生じます。
公開されているPublic CbCRと、現地の実際の申告データ、さらには有価証券報告書などの公開データとの間で不一致が生じている状態は、海外子会社の税務調査リスクを押し上げることになります。
また、前述したオーストラリアの税率差異分析のように、実効税率(ETR)の背景にある定性的な説明の開示にあたっては、本社による適切なコントロールが不可欠です。複雑な税務データは、適切な解説がなければ本来の事実とは異なるメッセージとして伝わってしまうリスクがあります。
例えば、現地のR&D税額控除の適用など正当な優遇税制の運用であっても、数値のみから納付税額が極端に少ないなどと捉えられ、租税回避のレッドフラッグとして各国の当局にみなされてしまい、不要な税務リスクが生じかねません。
その対策として、多く企業が実務として取り組んでいるのが、適切かつ適時なグローバル税務リスク評価を可能にする、適時な本社への海外税務リポーティング枠組の導入です。
事前にグローバル税務データを可視化して各地の税率差異の異常値を特定し、その数値の背景にある定性的な説明を準備した上で、現地顧問税理士のサポートのもと、Public CbCRの作成に着手するというプロセスを構築します。
日本本社が主導権を握る税務ガバナンスを構築するには、本社のグローバル税務を担当する税務アドバイザーのサポートのもと、グローバル税務ガバナンス体制を具現化することが急務です。その実現に向けたプロセスの構築としては、以下のようなものが挙げられます:
Public CbCRのデータ整合性問題により、2026年9月末に最初の申告期限を迎えるグローバルミニマム課税(GMT)におけるその実務プロセスを前倒しで再検討することが必要となります。
特定多国籍企業グループがGMT対応において最も重視しているのが「移行期間CbCRセーフハーバー」(TCSH)の適用です。
ここでデータソースとして使用する税務当局向けのCbCR(申告期限は年度末から12ヶ月後)に先んじて、今回のPublic CbCRが先行して提出されるため(例:スペインの6ヶ月期限)、TCSHの適用にあたって求められるCbCRとPublic CbCRデータとの整合性の確認を前倒しで行わなければなりません。
Public CbCRで開示した売上高や税前利益の額と、のちに提出するGIR(GloBE Information Return / 申告期限は原則年度末から1年3か月後)に記載されるTCSHデータとの間に説明のつかない不一致があれば、TCSHの適格性が否認される恐れがあります。
その結果、TCSHの「Once out, always out」ルールによって以降の年度の適用資格を失い、複雑な本則計算を行うことになるリスクやペナルティ、さらには複数国からの同時税務調査リスクに直面することになります。
[i] Grant Thornton Greece, “EU Public Country by Country Reporting Summary”, 2026年5月29日閲覧
[ii] European Commission, “Public country-by-country reporting taxonomy project”, 2026年5月29閲覧
[iii] Australian Taxation Office, “Significant global entities – penalties”, 2026年5月29日閲覧
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