インドにおける海外資産申告制度の概要と留意点
国際税務ニュースレターCRS等による各国税務当局間の情報交換が進むなか、海外資産に関する税務コンプライアンスの重要性が高まっています。本稿では、日系企業の進出が拡大するインドにおける海外資産の申告制度について、概要や対象資産、未申告時の罰則等を解説します。

国税庁は2025年6月に「移転価格税制の適用に係る簡素化・合理化アプローチに関するFAQ(2025年9月22日取得)」を公表しました。これは、2024年2月にOECD及びG20の「BEPS包摂的枠組み」において合意された簡素化・合理化アプローチに対する日本における対応や実務上の留意点を整理したものです。
この度のFAQの対象となった「移転価格税制の適用に係る簡素化・合理化アプローチ」とは、2024年2月に、OECD及びG20の「BEPS包摂的枠組み」から公表された移転価格制簡素化のためのガイダンス(原題:OECD/G20 Base Erosion and Profit Shifting Project Pillar One – Amount B)において示された、移転価格税制の適用に係る簡素化・合理化アプローチです。このアプローチは「利益B」とも呼ばれています。もう少し具体的に言うと、利益Bとは基礎的マーケティング・販売活動を行う販売会社の国外関連取引のうち一定の基準を満たした取引に対し、移転価格税制の適用の簡素化・合理化を図る方法です。
利益Bを導入した国・地域では、2025年1月1日以後に開始する事業年度から、対象となる取引に対して簡素化・合理化アプローチを適用できることとされています。
一方で我が国においては利益Bの導入を見送る方針が示されていました。ただし内国法人の国外関連者が所在する国・地域において簡素化・合理化アプローチが実施される可能性があります。この度国税庁から公表されたFAQでは、日本の対応、実務上の留意点が整理されています。
従来の移転価格実務では、比較対象企業の選定やベンチマーク分析に多大な時間とコストがかかり、税務当局間の判断差異による紛争や二重課税のリスクが高まっていました。特に、ルーティンな販売機能を担う子会社では、過度な文書化負担や価格調整が生じるケースが多く、納税者・税務当局双方に非効率が存在しました。利益Bは、こうした課題を解決するため、一定の要件を満たす取引について標準化された方法で利益率を決定する簡素化・合理化アプローチを提供します。
移転価格分析では一般に、分析対象となる国外関連取引について比較対象取引や比較対象企業を選定し独立企業間価格を算定します。一方で利益Bでは、OECDがあらかじめ用意した売上高EBIT比率(Return on Sales)の一覧表を用いて独立企業間価格を算定します。この表は産業の種類と財務指標とを軸とするマトリクスとなっており、対象取引が表のどこに当てはまるかを見つけるだけで用いるべき利益率が指定されます(その後の一定の調整も行う)。この決められた利益率を用いることで、独立企業間価格が簡単・迅速に算定されることとなります。
利益Bの対象となるのは、完成品の卸売販売や限定的なマーケティング・販売支援活動など、基礎的な機能を担う取引です。こういった活動は各国で事実パターンが類似し、比較可能性が高いためです。
一方で、無形資産やサービス提供取引、コモディティのトレーディング取引は対象外となります。無形資産は企業固有の価値が大きく、またコモディティは相場変動が激しいといった理由で、一律の標準的な利益率を適用することが難しいためです。
利益Bが主に対象として想定しているのは、税務執行能力が限られる国・地域です。日本は、長年の経験と実績に基づいた移転価格税制の運用能力を有しており、複雑な事案にも個別に対応できる体制が整っています。そのため、あえて簡素化されたルールを導入する必要性は低いと判断されています。
また、標準化した利益率の一律適用は、機能・資産・リスクの差異を十分に反映しない可能性があり、実態乖離による過少・過大帰属の懸念があります。政策上、過度な下限・上限の“暗黙の安全地帯”化も望ましくないとの見方があります。
利益 Bの導入は各国の任意とされており、仮に取引相手国が導入しても、日本が導入しなければ、日本側でその算定結果を認める義務はありません。このため、相手国が利益Bで評価し日本側ではそれが独立企業間価格として妥当ではないと評価する場合、両者の見解差から二重課税が生じ得ます。
この度国税庁が公表したFAQのポイントは以下のとおりです。
国外関連者が所在する国・地域でこのアプローチを適用していたとしても、日本では従来の独立企業間価格の算定方法を用いて、独立企業間価格を算定する必要があります。
この取扱いは、相手国が「covered jurisdiction」(本アプローチの適用が想定される特定の国・地域)に該当するかどうかには影響されません。
独立企業間価格の事前確認制度(APA)の申出を行う際も、従来の独立企業間価格の算定方法を用いる必要があります。
この点も、相手国が「covered jurisdiction」であるかどうかは関係ありません。
国外関連者が所在する国・地域でこのアプローチに基づく課税が行われた結果、日本との間で二重課税が生じた場合、その国と日本の間に租税条約があれば、二重課税を解消するための相互協議を申し立てることができます。
ただし、両国の税務当局間で行われる相互協議は、簡素化・合理化アプローチではなく、あくまで従来の独立企業間価格の算定方法に基づいて行われます。
国外関連者が所在する国・地域でこのアプローチを適用して作成された移転価格文書は、日本の文書化の報告様式に沿ったものとはいえません。したがって、従来の独立企業間価格の算定方法に基づいた移転価格文書を、日本の規定に従って別途作成・保存する必要があります。
ただし、外国で作成された文書の中に、従来の方法を用いた分析・算定結果も併記されており、かつその結果が簡素化・合理化アプローチの結果と整合的である場合には、日本の税制に適合した文書とみなされる可能性があります。
利益Bの概要については2024年3月発行の国際税務ニュースレター「BEPS に関する包摂的フレームワーク 第 1 の柱・利益 B ~基礎的販売活動に係る簡素化・合理化された移転価格設定の適用~」にてお知らせしております。こちらもあわせてご確認ください。
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