最高裁判決後の米国関税の動向
国際税務ニュースレター米連邦最高裁判所は2026年2月20日、国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠とするトランプ政権の追加関税(IEEPA関税)を違法と判断しました。これを受けて米国際貿易裁判所は2026年3月4日、米税関・国境取締局に対し、IEEPA関税の還付を命じました。 本稿では、IEEPA関税の発動から還付に至るまでの経緯を整理し、還付のプロセスおよびIEEPA関税の代替措置について解説します。
2026/08/20 読了時間 5 分

令和8年1月、グローバル・ミニマム課税について、独自の代替最低税やCFC税制といった最低課税制度を有する米国等の制度との不調和を解消し、双方を共存させるための国際合意(共存システム:Side-by-Side system: SbS)が成立しました。これに対応する新たな適用免除基準が我が国の税制においても措置され、内国法人の令和8年1月1日以後に開始する対象会計年度について適用されます。
本改正は、一定の要件を満たす国を所在地国とする最終親会社等をもつ多国籍企業グループについて、我が国における所得合算ルール(IIR)及び軽課税所得ルール(UTPR)の適用を免除する措置です。本制度は以下の2つの適用免除基準から構成されます。
適格要件(国内課税要件、国外課税要件、外国税額控除要件)を満たす共存適格国に最終親会社等が所在する多国籍企業グループについては、我が国における各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(いわゆるIIR)及び各対象会計年度の国際最低課税残余額に対する法人税(いわゆるUTPR)の適用が免除(課税額をゼロとする)されます。
【共存適格国に求められる適格要件】
① 国内課税要件
地方税調整後の法定名目法人税率が少なくとも20%以上であること
各対象会計年度の国内最低課税額に対する法人税(いわゆるQDMTT)、又はグローバル・ミニマム課税の政策目的と整合的な調整を経た財務諸表上の所得に基づき、名目税率で15%以上の税率の法人代替最低税を有していること
当該多国籍企業グループの国内事業全体の利益に対する実効税率が15%未満となる実質的なリスクがないこと
② 国外課税要件
広範な課税ベースに基づく、外国所得に対して適用される包括的な税制を有すること(※当該所得が分配されているかに関わらず外国子会社等の受動的・能動的所得の両方が課税ベースとされていること等)
BEPSリスクに対処するため、一方的に機能する実質的なメカニズム(※)を組み込んでいる制度であること(※能動的所得に関して生じた外国税額控除につき、受動的所得に関して生じた租税債務の相殺に使用できないこと等)
当該多国籍企業グループが国外事業全体の利益に対して15%未満の実効税率となるリスクがないこと
③ 外国税額控除要件
QDMTTを含む外国法人所得税に対する外国税額控除制度を提供すること
これらの国内課税要件、国外課税要件、及び外国税額控除要件を満たしていると国際的に認められ、財務大臣が指定する国又は地域に最終親会社等がある場合に、本適用免除基準(SbSセーフ・ハーバー)が適用されます。現時点では、アメリカ合衆国のみが指定されています。これにより、最終親会社が米国にある多国籍企業グループは、我が国におけるIIR及びUTPRの適用免除を受けることが可能となります。今後、国際的な議論の動向によって指定される国・地域が増える可能性があります。
適格要件のうち国内課税要件のみを満たす国に最終親会社等が所在する多国籍企業グループについて、最終親会社等所在国の利益に係るUTPRの適用を免除(課税額をゼロとする)する措置です。
日本のQDMTTについては本適用免除制度の対象外となります。したがって、例えば米国に最終親会社がある多国籍企業グループの日本子会社が、複数の税額控除の適用等により日本の実効税率が15%未満となった場合には、本セーフ・ハーバーの適用に関わらず、当該日本子会社に対して日本の国内最低課税(QDMTT)が課されることになります。
【適用関係】
本改正は、内国法人の2026年1月1日以後に開始する対象会計年度について適用されます。同月の国際合意に沿って、同日以後に開始する事業年度から遡及適用を行うことが認められています。
実効税率(ETR)計算上、適格給付付き税額控除以外の税額控除は分子(国別調整後対象租税額)の減算調整として扱われるため、分母(国別グループ純所得の金額)への加算調整として扱われる適格給付付き税額控除(QRTC)に比して実効税率の減少幅が大きく、不利な取り扱いとなっていました。この影響を緩和するため、現地での経済的実体と強く結びついた特定の税制優遇措置について、選択により国別実効税率計算の分子に一定の上限額まで足し戻すことを認める「SBTIセーフ・ハーバー」が創設されました。
SBTIセーフ・ハーバーにおいては、法域別の実効税率計算上、一定の実質ベースの税制優遇措置(適格税制優遇措置:QTI)の合計額を、一定の上限額まで分子(調整後対象租税額)に加算することを許容します。さらに、QTIの定義を満たすQRTC等については、分母(個別計算所得等の金額)から除外する取り扱いも、年次選択により可能とされました。
本特例で分子に足し戻す加算額の上限は、原則として次に掲げる金額のうちいずれか多い金額の5.5%相当額となります。
なお、法人の選択(5年選択)により、上記の5.5%上限に代えて「特定資産(土地等の非償却資産を除外。減価償却資産に限定)の額に係る帳簿価額の1%相当額」とすることも可能です。SBIE計算とは異なり、土地等の非償却資産が上限枠計算から除外される点に注意が必要です。
SBTIセーフ・ハーバーをQRTCに適用する場合には、特別給付付き税額控除等相当額を分母及び分子から減算調整することが求められます。
これにより、選択したQRTCに限って、従来の分母の加算調整(給付付き税額控除を補助金と同様の取扱いとする調整)をキャンセルし、分子の減算調整(通常の税額控除と同様の取扱いとする調整)を行います。すなわち、本特例の適用を受ける場合には、一般的な特別税額控除と同等の取扱いの状態に引き直す調整を行うこととなります。
【適用関係】
本改正は、内国法人の2026年1月1日以後に開始する対象会計年度について適用されます。同月の国際合意に沿って、同日以後に開始する事業年度から遡及適用を行うことが認められています。
グローバル・ミニマム課税制度の導入初期における事務負担を軽減する移行期間 CbCR セーフ・ハーバー(移行期間 CbCR SH)の適用期限が1年間延長され、内国法人の「2027年12月31日以前に開始し、かつ2029年6月30日までに終了する対象会計年度」まで適用可能となりました。
なお、2027年からは恒久的な簡素化措置である「簡易ETRセーフ・ハーバー(ETR 15%固定、「Once out Always Outルール」無し、CFC合算税等のプッシュダウン可能)」がグローバルで順次導入されます(我が国では令和9年度以後の税制改正で対応検討)。両制度が重複する事業年度については、納税者が国・地域ごとに適用措置を選択することが可能です。
【適用関係】
本改正は2026年4月1日から施行されています。
12月決算企業(外資系子会社等)と3月決算企業(日系多国籍企業等)のそれぞれにおける、各年度の適用セーフ・ハーバーを表にしました。
令和8年度税制改正により移行期間セーフ・ハーバーの適用期間が1年延長されましたが、一度でもこのセーフ・ハーバーの適用を受けなかった(または要件を満たせなかった)年度がある場合、それ以降の全ての年度で適用を受けられなくなります(「Once out, always out」ルール)。
この不適用判定には、我が国におけるIIRの施行前に、既にIIRが先行施行されている他の国における申告において、ある所在地国について本特例の適用を受けずに本則調整計算等を行った場合も含まれます。 例えば、海外中間親会社段階の過年度申告において、特定の現地子会社国について本セーフ・ハーバーの適用を受けていなかった場合、日本親会社の初年度申告において、当該国が要件を満たしていたとしても適用不可となります。グループ全体の過年度の海外申告状況の確実な追跡・確認が重要です。
米連邦最高裁判所は2026年2月20日、国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠とするトランプ政権の追加関税(IEEPA関税)を違法と判断しました。これを受けて米国際貿易裁判所は2026年3月4日、米税関・国境取締局に対し、IEEPA関税の還付を命じました。 本稿では、IEEPA関税の発動から還付に至るまでの経緯を整理し、還付のプロセスおよびIEEPA関税の代替措置について解説します。
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