日本公認会計士協会より、「『税効果会計に関するQ&A』の改正について」が公表されました。企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」の公表に伴い、Q15が追加されたものです。
(主な改正内容)
退職給付に係る負債に対する繰延税金資産の回収可能性
連結財務諸表において未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用(以下、未認識項目という)を負債(又は資産)として認識したことにより生じた一時差異は、連結手続上生じた将来減算一時差異(又は将来加算一時差異)と考えられる。
連結財務諸表における退職給付に係る負債(又は資産)に対する税効果については、まず、個別財務諸表における退職給付引当金に係る将来減算一時差異に対する繰延税金資産の額を計上し、これに連結修正項目に対する税効果額を合算し、当該合計額についての回収可能性を判断することになると考えられる。
会社分類
連結財務諸表において未認識項目を負債(又は資産)認識するか否かによって将来年度の課税所得の見積りが変わるものではないため、連結財務諸表における繰延税金資産の回収可能性の判断は、個別財務諸表における繰延税金資産の回収可能性の判断と同じになる。したがって、監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(以下、監査委員会報告第66号という)の会社分類(例示区分)は、連結財務諸表と個別財務諸表とで変わらないもの考えられる。
たとえば、個別財務諸表における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得を毎期計上しており、個別財務諸表の会社分類(例示区分)が①である場合において、連結財務諸表における未認識項目の負債認識によって生じる将来減算一時差異を考慮すると、これを十分に上回る課税所得を毎期計上していないことになるときであっても、連結財務諸表の会社分類(例示区分)は①となる。
将来解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異の取扱い
退職給付引当金に係る将来減算一時差異に対する「将来解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異の取扱い」(監査委員会報告第66号)は、連結財務諸表における未認識項目の負債認識によって生じる将来減算一時差異についても同様に当てはまると考えられる。
繰延税金資産の回収可能性見直し時における処理(なし⇒あり)
まず、個別財務諸表における退職給付引当金に係る将来減算一時差異に対して繰延税金資産を計上し(相手勘定は法人税等調整額)、これに加え、連結財務諸表における未認識項目の負債認識によって生じる将来減算一時差異に対する繰延税金資産のうち、回収可能部分について繰延税金資産を計上することになると考えられる(相手勘定は退職給付に係る調整額)。
繰延税金資産の回収可能性見直し時における処理(あり⇒なし)
個別財務諸表における退職給付引当金に係る将来減算一時差異が優先して解消するものとして繰延税金資産の額を算定する。すなわち、個別財務諸表における退職給付引当金に係る将来減算一時差異に対する繰延税金資産のうち回収可能性がない部分を取り崩す(相手勘定は法人税等調整額)ときには、連結財務諸表における未認識項目の負債認識によって生じる将来減算一時差異に対する繰延税金資産はすべて回収可能性がないと判断されるため、これをすべて取り崩すことが考えられる(相手勘定は退職給付に係る調整額)。
日本公認会計士協会ホームページ