
国子会社からの配当が外貨で行われた場合の子会社簿価減額特例の適用免除基準(2,000万円基準)における外貨換算方法について、国税庁の質疑応答事例[1]が追加され、実務上の取扱いが明示されました。本稿では外国子会社から外貨建ての配当を受領するにあたり留意すべき項目とその外貨換算方法についてまとめます。
概要
外国子会社から外貨建ての配当を受領するにあたり税務上検討すべき論点は複数ありますが、主に以下の論点が挙げられます。
① 外貨建取引の円換算
② 外国子会社からの受ける配当等の益金不算入
③ 外国源泉税の取扱い及び外国税額控除の不適用
④ 子会社株式簿価減額特例
各論点と外貨換算方法
① 外貨建取引の円換算
法人税法第61条の8第1項では、外貨建取引(外国通貨で支払が行われる一定の資産の販売等及び剰余金の配当その他の取引をいいます。)を行った場合には、その外貨建取引の円換算額は、その外貨建取引を行った時における外国為替の売買相場により換算した金額とすることとされています。また、法人税基本通達13の2-1-2(注)2では、外貨建取引の円換算について、継続適用を条件として、取引日の属する月の前月の平均相場のように1月以内の一定期間における電信売買の仲値による円換算の方法も認められております。
② 外国子会社から受ける配当等の益金不算入
法人税法第23条の2に基づき、外国子会社から受ける剰余金の配当等は一定要件を満たせば95%益金不算入となります。この益金不算入額は外貨換算後の円額に基づいて計算されます。税務上の外貨換算方法は上記1の通りであり、剰余金の配当の受領における外貨建取引を行った時とは配当の効力発生日と考えられます。ただし、上記1の通り継続適用を条件として、当該外貨建取引の内容に応じてそれぞれ合理的と認められる一定の為替相場も使用することができるとされております。
③ 外国源泉税の取扱い及び外国税額控除の不適用
外国子会社から受ける剰余金の配当等の額について、外国子会社配当等の益金不算入の規定の適用を受ける場合には、その配当等の額について課税される外国源泉税等の額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されません(法人税法第39条の2)。この損金不算入額の計算は、外貨換算後の円額に基づくこととされており、外貨建ての源泉税については、配当等の額の換算に適用する為替相場により円換算します(法人税基本通達16-3-47(1)イ)。
なお、外国子会社から受ける剰余金の配当等の額につき本規定(外国子会社配当等の益金不算入)の適用を受けるときは、その剰余金の配当等に係る外国法人税の額は外国税額控除の対象となりません(法人税法施行令142条の2第7項3号)。
④ 子会社株式簿価減額特例
特定関係にある子法人から一定の配当額を受ける場合には、その法人の有する特定関係子法人株式等の帳簿価額から、当該配当額のうち益金不算入相当額を減額されます(子会社株式簿価減額特例[2] [3])。この減額される金額については、上記2の方法により円換算した益金不算入額となります。
なお、本特例には適用除外規定が設けられており、その一つとして少額免除基準(2,000万円を超えない配当等の額)がありますが、冒頭記載した質疑応答事例1において、原則的な取扱いのほか、継続適用を条件として取引日の属する月の前月の平均相場のように1月以内の一定期間における電信売買の仲値による円換算の方法も認められることが明らかにされました。したがって、外貨建て配当額の円換算方法を原則的な取扱い(その外貨建取引を行った時における外国為替の売買相場により換算)によれば少額免除基準2,000万円を超えるものの、上記の例外的な取扱いにより計算した結果、2,000万円を超えないこととなる場合は、本制度の適用が免除されることが明示されました。
お見逃しなく!
子会社株式簿価減額特例は、受領した配当金を「元本の払い戻し(投資の回収)」とみなし、将来の譲渡損益を適正化するために子会社株式の簿価を減額する制度です。
本稿では少額免除基準について解説していますが、簿価減額の計算においても外貨建て配当は円換算額を用います。簿価を減額すると、将来における簿価減額の対象となる株式を譲渡する際の譲渡益(または譲渡損)は、減額した金額分だけ増加(または減少)します。したがって、本文の主題である円換算方法の適用検討が最終的な株式譲渡損益に直結することとなる点にご留意ください。
[1] 国税庁, 質疑応答事例「外国子会社からの配当が外貨で行われた場合における子会社株式簿価減額特例の適用免除基準(2,000万円基準)について」, 2025年12月18日取得
[2] 2020年5月 国際税務ニュースレター「子会社配当と子会社株式の譲渡を組み合わせた租税回避への対応」
[3] 2022年10月 国際税務ニュースレター「子会社株式簿価減額特例の見直し」
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