2026年7月開催の企業会計基準諮問会議において、我が国の会計基準における「のれんの非償却の導入およびのれん償却費計上区分の変更」(以下、「のれんの償却/非償却問題」という。)について、のれんを一定の期間にわたって償却を行う基本的な会計処理の枠組みは変更しないこととし、のれんの非償却の導入(選択制)およびのれん償却費の計上区分変更についても、これ以上の検討を進めないことで合意が得られました。
2025年8月に掲載した「のれんの非償却に関する議論」において、のれんの償却/非償却問題の検討が同年7月から開始されたことをお伝えしましたが、今回の合意に至るまでの1年間の主な動向は以下のとおりです。
公聴会の実施
2025年8月から2026年2月にかけて8回にわたる公聴会が開催され、学識経験者、財務諸表作成者、財務諸表利用者および監査人に対する意見聴取が行われました。その結果、主に以下のような見解が得られました。
- のれんの償却・非償却の選択制の採用は、比較可能性の観点から懸念があり、難しい
- 仮にのれんの非償却を導入する場合、広範な会計基準のセットでの見直しが不可欠であり、早期で円滑な対応は難しい
- 上記からすると償却の維持が有力な選択肢となるが、償却期間や償却方法に関するガイダンスや開示の見直しを行うことは考えられる
- のれん償却前営業利益の欄を設けることは、投資家への情報提供の工夫となる
情報要請および追加の公聴会の実施
公聴会により、のれんの償却/非償却問題に関する情報は相当程度蓄積されましたが、他の意見を有する利害関係者の存在を否定できないため、より慎重な対応を行うべく、2026年4月から6月にかけて情報要請が行われました。すなわち、これまでに収集した情報を整理して一般に広く公表し、そこに記載されていない追加的な情報があれば、その提供を求めました。その結果、のれんの非償却導入の不可逆性(のれんを非償却に変更すると、償却を再導入することは困難となる)に関するコメントのほか、いくつか新たな観点からの意見が寄せられました。
さらに、追加的な公聴会が2026年6月に開催され、のれん非償却が望ましいと考えられるものの、非償却導入の議論には一定の時間を要することを踏まえ、新たな提案として、のれん償却前営業利益等を決算短信等で制度開示させたり、のれん償却前の利益をベースとした利益に関連する指標(EPS、PER、ROEなど)を利用できる環境を整えるべき、などの意見が聞かれました。
お見逃しなく!
意見聴取等の過程で、償却期間の設定の難しさや償却方法に関する実務上の課題が明らかとなったため、のれんは「20年以内のその効果のおよび期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却する」とする現行基準の考え方を明らかにすることで対応を図ることができるか、検討することとなりました。さらに、のれん償却費を営業費用に計上したうえで、のれん償却前利益に関する情報を提供することが会計基準の改善をもたらすことになるか、検討することとなりました。
今回の合意により、のれん償却に関する現行の枠組みは維持されることとなりましたが、償却に関連する実務上の課題への対応や現行基準の改善への取組みは、今後も引き続き行われます。