アーンアウト条項付き株式譲渡契約における調整金の税務実務と最新動向
ADVISORY INSIGHTS M&A税務M&Aで活用されるアーンアウト条項において、事後的に授受される調整金の税務上の取扱いは、売主(個人)の税引後手取額に重大な影響を与えます。本稿では、最新の国税不服審判所裁決(令和7年4月21日)を含む過去の重要事例を踏まえ、所得区分ごとに判断基準や実務上の留意点について整理し解説します。
2025/11/13 読了時間 4 分

M&Aの場面において、株式譲渡による法人の売却で売主である株主が法人である場合には、事前配当+株式譲渡スキームにより当該株式譲渡益の圧縮によるタックスメリットの享受を検討することがよく見られます。これは株式譲渡益に対しては通常の法人税率による課税が行われる一方、譲渡対価の一部を譲渡対象法人からの配当により支払うことによる「受取配当等の益金不算入制度の適用」により実現されます。ここでいう事前配当には、通常の金銭による配当のほか、みなし配当事由が生じる取引も含まれます。みなし配当事由が生じる方法として自己株式の取得があり、特に売主である株主の中に個人株主が存在しており、特定の株主(即ち法人株主)に対してのみ事前配当を実施したいといった場面では有効な方法となります。
本稿では、内国法人を株主とする場合における自己株式取得を用いた「事前配当+株式譲渡スキーム」における税務上の留意点を解説します。
※ 事前配当の実施は、 自己株式取得によるみなし配当の発生でも同様の効果が得られる
自己株式の取得に伴い、取得対価として株主に支払われた金銭等の額のうち、その株式に対応する法人の資本金等の額を超える部分については、税務上は、配当とみなされます。
※ 種類株式を発行している場合は、株式の種類ごとに「種類資本金等の額」を算出し、種類資本金等の額を基礎として計算します。
法人株主の場合、みなし配当については、法人税法により受取配当等の益金不算入の適用があります。なお、益金不算入となる金額の算定基礎となる区分の判定は、自己株式の取得の事由が生じた日を基準日として判定します。
| 区分 | 株式保有割合 | 益金不算入額 |
|---|---|---|
|
完全子法人株式等 |
100% |
受取配当等の全額 |
|
関連法人株式等 |
1/3超 |
受取配当等の額-負債利子の額 |
|
その他株式等 |
5%超1/3以下 |
受取配当等の額×50% |
|
非支配目的株式等 |
5%以下 |
受取配当等の額×20% |
※ 株式保有割合による完全子法人株式等及び関連法人株式等の区分判定にあたり、通常配当の場合は一定の保有期間要件が存在しますが、みなし配当にあっては、効力発生日の前日において当該株式保有割合を満たしていれば、要件を充足します(法令22①、22の2①)
※ 株式等の取得時において、その株式等を発行法人が自己株式等として取得することを予定している場合には、「自己株式取得予定株式等」として、受取配当等の益金不算入の規定の適用はありません(法法23③)。なお、この「取得」には、相対取引による株式の取得のほか、合併等により被合併法人等が合併法人等の株式を取得する場合も含まれます。
子会社株式簿価減額特例とは、内国法人が特定関係子法人から一定規模以上の配当を受ける場合において、特定関係子法人株式の税務上の帳簿価額から、受取配当等の益金不算入の規定等により法人税の計算上益金の額に算入されなかった金額に相当する金額を減算するというルールです。従前、内国法人が子会社からの受取配当について、受取配当等の益金不算入の規定を適用することで、無税で配当を受け取るとともに、配当により時価が下落した子会社株式を譲渡することによって譲渡損失を創出することが可能であった状況に対して、租税回避防止のために設けられた規定です。
特定関係子法人とは、対象となる配当等の額に係る決議日等において、当該配当等を受ける内国法人との間に特定支配関係(発行済株式又は配当等議決権の50%超の保有関係)がある他の法人をいいます。
本制度は、内国法人が特定関係子法人から受ける配当等の額及び同日事業年度内配当等の額の合計額(同一事業年度内に複数回配当等を実施する場合、合計額で判定)が、基準時の直前における当該特定関係子法人の株式等の税務上の帳簿価額の110分の10に相当する金額を超える場合に検討が必要となります。
本制度においては、次の適用除外要件のいずれかに該当する場合には適用されません。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
|
内国株主割合要件 |
特定関係子法人の設立日から特定支配日(特定支配関係を有することとなった日)までの期間を通じて、特定関係子法人の発行済株式等の90%以上が内国株主(内国法人・居住者等)に保有されている場合 |
|
特定支配日利益剰余金要件 |
特定支配日後の特定関係子法人の利益剰余金の純増額からの配当等である場合 |
|
10年超支配要件 |
特定支配日から10年経過後に行われる特定関係子法人からの配当等である場合 |
|
金額要件 |
同一事業年度中に受ける特定関係子法人からの配当の額の合計額が2,000万円以下である場合 |
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