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買収した法人がグループ通算制度の加入時期の特例を適用した場合の留意事項

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2020年4月1日以後開始する事業年度より従来の連結納税制度からグループ通算制度へ移行されています。連結納税制度では事業年度の中途で親法人との間に完全支配関係を有することとなった場合のグループへの加入時期の特例として、翌月の初日を加入日とする措置が設けられていましたが、グループ通算制度では翌会計期間の初日を加入日とすることができる措置が加えられました。これにより、連結納税制度では加入を遅らせる期間は1ヶ月程度であったものが、グループ通算制度では最大1年に延長されています。加入時期の特例を適用した場合には、完全支配関係発生日と通算承認日(加入日)が大きく乖離することがあり、グループ通算制度では連結納税制度とは異なる取扱いもあるため、以下のような事項について留意が必要となります。

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1.   グループ通算制度の加入時期と事業年度

1)   原則的取扱い

グループ通算制度の適用を受けている法人が株式買収により他の法人を100%子会社とする場合、その子法人は株式の引渡日に通算グループに加入したものとみなされ、加入日(完全支配関係発生日)の前後で事業年度を区切り、加入日の前日までの事業年度については通常の単体申告を行い、加入日以後の事業年度については通算法人としてグループ通算申告を行うことになります(法法14①一、64の9⑪)。

2)   加入時期の特例

期中に加入した子法人については、一定の書類の提出を要件として、完全支配関係発生日では事業年度を区切らず、完全支配関係発生日の前日の属する月次決算期間の末日または会計期間の末日までの期間(以下「特例決算期間」という)をその子法人の事業年度とする加入時期の特例(翌月初または翌期首から加入する特例)の適用が認められています(法法14⑧)。

2.   加入時期の特例を適用する場合の留意事項

1)   加入時期の特例の適用手続き

加入時期の特例の適用を受ける場合には、加入子法人における、この特例の適用がないものとした場合に生ずることとなる原則的な加入日(完全支配関係発生日)の前日の属する事業年度に係る確定申告書の提出期限となる日までに、通算親法人が加入時期の特例を受ける旨等を記載した書類を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります(法法14⑧、法規8の3の3)。例えば、加入日が2026年4月15日であれば、前日が2026年4月14日となり提出期限は2026年6月14日となります。

この届出書には原則的な加入日(完全支配関係発生日)、原則的な加入日の前日の属する特例決算期間(月次決算期間または会計期間)、通算子法人最初通算事業年度等を記載します。

ポイント

2)   通算親法人と加入子法人の事業年度が異なる場合

翌期首から加入する特例を適用する場合において、通算親法人と加入子法人の決算期が異なる場合は、加入子法人の決算日の翌日から通算親法人の事業年度終了の日までの期間が特例による事業年度となります。例えば、通算親法人が3月決算、加入子法人が12月決算の場合で、加入日が2026年4月15日であれば、加入子法人は2026年1月1日から2026年12月31日までの事業年度について通常の単体申告を行い、2027年1月1日から2027年3月31日までの事業年度については通算法人としてグループ通算申告を行うことになります。

ポイント

3)   加入子法人が保有する他の子法人

通算グループに加入するパターンとしては、複数の子法人(いわゆる連れ子)がある法人を買収により完全子会社にするケースがありますが、加入時期の特例の効果は、加入子法人が発行済株式株式等の全部を直接または間接に保有する他の子法人で、当該加入子法人の完全支配関係発生日から月次決算期間または会計期間の末日までの間に完全支配関係を有することになったもの(以下「加入孫法人」という)についても及ぶこととされています(法法14⑧一、法基通1-2-10)。

連結納税制度では、加入子法人と加入孫法人が加入時期の特例の適用をそれぞれ選択できましたが、グループ通算制度では加入を遅らせる期間が最大1年とされたこと等により、加入子法人が加入時期の特例を適用する場合には、加入子法人と加入孫法人は同じ加入時期の特例の適用対象となることとされています。

ポイント

4)   月末または期末まで完全支配関係が継続しない場合

加入時期の特例の適用を受けている子法人が、月次決算期間または会計期間の末日まで子法人と通算親法人の完全支配関係が継続しないときは、その子法人の事業年度は完全支配関係発生日の前日では区切られず(法法14⑧二)、通常の単体申告を行うことになります。つまり、特例決算期間中に完全支配関係を有しなくなった場合は、通算制度の承認の効力が生じることはなく(法法64の9⑪)、その子法人は通算グループに加入も離脱もしないこととなります。

ポイント

3.   加入時期の特例を適用している場合の時価評価課税の取扱い

グループ通算制度への加入時において、適格組織再編と同等の要件を満たさない等一定の場合は、加入直前事業年度終了の時に有する一定の時価評価対象資産について時価評価課税が適用されますが、加入時期の特例を適用する場合に時価評価課税を行うタイミングは通算承認日(加入日)の前日となる一方で、時価評価の対象となる法人の判定は完全支配関係発生日を基準として判断することになるため留意が必要です(法法64の12①、法令131の16①)。

なお、特例決算期間中に通算親法人との完全支配関係がなくなった場合には、通算制度の承認の効力が生じることはありませんので、加入に伴う時価評価課税も適用されません。

上記の取扱いは、特例決算期間中に子法人が被合併法人として合併(順合併、逆さ合併および兄弟会社との合併)により消滅した場合も同様であり、また、その合併が完全支配関係内の合併の場合は適格合併と想定され、合併による資産の譲渡損益課税等も生じないと考えられます。したがって、買収子法人(孫法人含む)がグループ通算制度における時価評価対象法人に該当する場合で時価評価対象資産の含み益が多額であると見込まれる状況等においては、特例決算期間中の合併についても検討の余地があると考えられます。

また、連結納税制度と同様にグループ通算制度においても、通算グループに一旦加入後2ヶ月以内(通算親法人の通算事業年度終了日前)に離脱した場合は、時価評価課税は適用されませんが(法令131の16①六)、この場合の離脱理由は、通算子法人が単独で離脱する事由(法法64の10⑥五、六)に限られており、加入後2ヶ月の期間中に通算グループ内の他の法人と合併した場合は、通算グループから実質的に離脱したとはいえないため、時価評価課税が必要となることに留意が必要です。しかしながら、グループ通算制度では翌期首から加入する特例が認められたこともあり、加入後に即離脱という当該規定の適用事由は実務上限定的と思われます。

ポイント

4.   特例決算期間中に合併した場合の資産調整勘定対応金額等の取扱い

グループ通算制度では、通算子法人株式を外部に譲渡した場合に、当該通算子法人株式の帳簿価額を税務上の簿価純資産価額に引き直す投資簿価修正が行われますが、その際、過去にプレミアムを付けて買収した子法人株式については、買収プレミアム相当(資産調整勘定対応金額等)を離脱子法人の簿価純資産価額に加算できる措置が設けられています。

子法人の買収時にプレミアム相当を含めた高い評価額で取得しており、その後当該子法人が被合併法人として合併により消滅した場合、通算グループに加入した上での合併であれば一定の要件の下で当該子法人の資産調整勘定対応金額等を合併法人に引継ぐことができ(法令119の3⑥二)、将来において当該合併法人が通算グループから離脱する際の投資簿価修正に反映させることができます。

しかしながら、特例決算期間中に子法人が被合併法人として合併により消滅した場合は、当該子法人は通算グループに加入も離脱もしていないことから、子法人株式取得の際のプレミアム相当を合併法人株式の投資簿価修正に反映させることはできませんので留意が必要となります。

ポイント

お見逃しなく!

グループ通算制度の加入時期の特例を適用するか否かについては、一般的には決算申告に係る事務負担の観点から検討されることが多いと思われます。しかしながら、特例決算期間中に組織再編の予定がある場合等には、通算グループへの加入・離脱については有利・不利いずれの場合も想定されますので、慎重な判断が必要になると考えられます。

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