財務モデリングの基本 2 - モデル仕様書(Model specification)の重要性
ADVISORY INSIGHTS M&Aアドバイザリー適切に構築された財務モデルは経営上の意思決定において重要な役割を果たすものとなり得ます。しかし、財務モデルそのもの以上に重要となるのが、モデルをどのような構造でつくるのかを定義する「モデル仕様書(Model Specification)」です。本記事では、モデル仕様書とは何か、その重要性と作成時に押さえるべきポイントをわかりやすく解説します。

連結納税制度(グル-プ通算制度)や法人税の繰戻し還付制度のように、国税独自の税制により地方税の計算と連動しない制度があります。重要性の観点から地方税は税務デューデリジェンスの調査範囲の対象外とされるケースもありますが、国税独自の税制による地方税の税務処理について検出事項となるケースが散見されます。今回は当該論点について解説いたします。
連結納税制度は国税(法人税)における制度であるため、地方税(住民税)の計算には影響させない仕組みを設けています。具体的には、連結法人で生じた欠損金額が損益通算により他の連結法人の所得金額と相殺された場合において、住民税ではその相殺がなかったものとして通常の単体納税が継続している状態に戻すため、損益通算により相殺された欠損金額から住民税における欠損金相当額を算出し、住民税の課税標準から控除することができます(旧地方53⑨、321の8⑨)。
住民税の課税標準は【法人税の課税所得金額×法人税率】であり、住民税は当該課税標準に住民税率を乗じて算出されます。そのため住民税を通常の単体納税が継続している状態に戻すには、相殺された欠損金額×法人税率を、住民税における欠損金相当額として住民税の課税標準から控除することとなります。住民税における欠損金相当額を控除対象個別帰属税額といい、計算式は下記のとおりとなります。
控除対象個別帰属税額(住民税における欠損金相当額)=相殺された欠損金額 × 法人税率
連結納税制度から単体納税へ移行した場合には、連結法人が有する控除対象個別帰属税額(住民税の欠損金相当額)は、単体納税に引き継ぐことができ、控除を受けることができます(令和2年地方改正法附則5⑤、令和2年地令改正法令附則3㉙)。
例えば下記の計算イメージによると、損益通算により相殺された欠損金額×法人税率=△464(住民税における欠損金相当額)を住民税の課税標準から控除することで住民税額はゼロとなり、結果として連結納税時代の欠損金の相殺がなかったものとした場合の住民税額と同額となります。
連結納税制度時代の控除対象個別帰属税額(住民税の欠損金相当額)は単体納税移行時に引き継ぐことができないと誤認することにより、地方税申告書に控除を行うための別表の添付が漏れ、そのまま住民税の計算を行ってしまうといった誤りが想定されます。
欠損金の繰戻し還付制度は国税(法人税)における制度であるため、地方税(住民税)の計算には影響させない仕組みを設けています。具体的には、欠損金の繰戻し還付を行った場合において、住民税においてはその繰戻し還付がなかったものとして欠損金を有している状態に戻すため、その繰戻し還付の規定により還付を受けた法人税額を住民税における欠損金相当額として、住民税の課税標準から控除することができます(地方53㉓、321の8㉓)。この住民税における欠損金相当額を控除対象還付法人税額といい、計算式は下記のとおりとなります。
控除対象還付法人税額(住民税における欠損金相当額)=還付を受けた法人税
例えば下記の計算イメージによると、欠損金の繰戻し還付により還付を受けた法人税額△1,160(住民税における欠損金相当額)を住民税の課税標準から控除することで住民税額はゼロとなり、結果として繰戻し還付がなかったものとした場合の住民税額と同額になります。
国税において欠損金の繰戻し還付を行った場合に控除対象還付法人税額(住民税における欠損金相当額)について、地方税申告書に控除を行うための別表の添付を失念し、そのまま住民税の計算を行うといった誤りが想定されます。
上記の住民税における欠損金相当額は、いずれも10年間繰り越して控除することができます。上記事例の様な地方税の誤りが検出された場合は、追徴課税リスクは存在しないものの、M&A実行後における是正処理を行うことを検討する必要があると考えられます。例えば、地方税申告書に住民税における欠損金相当額の控除を行うための別表の添付が漏れていた場合において、税額が減少する場合には更正の請求、税額に変動がない場合には別表の追加提出といった是正処理が考えられます。
適切に構築された財務モデルは経営上の意思決定において重要な役割を果たすものとなり得ます。しかし、財務モデルそのもの以上に重要となるのが、モデルをどのような構造でつくるのかを定義する「モデル仕様書(Model Specification)」です。本記事では、モデル仕様書とは何か、その重要性と作成時に押さえるべきポイントをわかりやすく解説します。
不確実性が増す現代の経済社会において、適切に構築された財務モデルは経営上の意思決定において重要な役割を果たすものとなり得ます。しかし、「適切に」財務モデルを構築するためには、モデルを作成した人以外の誰もが操作しやすく、理解しやすいものとなるよう基本的な“お作法”を守る必要があると筆者は考えています。本稿では、財務モデルの果たす役割・目的をお伝えするとともに、財務モデルが備えるべき基本ルールについて概説します。
2020年4月1日以後開始事業年度から、連結納税制度はグループ通算制度へ移行しました。加入時期の特例が見直され、加入日を翌会計期間初日とすることが可能となり、加入を遅らせる期間は最大1年に延長されています。加入時期の特例を適用した場合、完全支配関係発生日と加入日が乖離するケースも生じ得ます。本稿では、制度変更に伴う取扱いの違いを踏まえ、実務上留意すべき事項を整理します。
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令和4年4月1日以降開始事業年度からグループ通算制度が開始しています。グループ通算制度では、「投資簿価修正」規定が設けられており、グループ通算制度を適用している法人が通算子法人をM&Aにより通算グループ外に譲渡する場合、税務上はその子法人の譲渡時における簿価純資産をその子法人株式の譲渡原価として株式譲渡損益を計算することとされています。これは通算子法人株式の譲渡による利益や損失の二重計上の防止等の観点、特に通算子法人株式の意図的な譲渡損計上による租税回避行為を防止するため設けられた規定です。一方で、通算子法人株式の取得価額に企業買収時のプレミアム相当額が含まれている場合、そのプレミアム相当額を譲渡原価として損金算入する機会が失われることが実務上疑問視されており、令和4年税制改正において投資簿価修正の特例として一定の金額をその通算子法人の簿価純資産価額に加算できる措置が設けられています。本稿ではその改正の概要について解説します。