
東京証券取引所(以下「東証」)ではグロース市場(以下「グロース」)の機能発揮[1]に向け各種対応に取り組んでおり、その一環として、上場維持基準の見直しに着手しています。本稿ではこの動きと今後の新規上場に与える影響について触れます。(2025年7月10日現在の情報に基づいています)
グロースの上場維持基準見直し(引き上げ)
今回の見直しではグロースの上場維持基準が「上場5年経過後から、時価総額100億円以上 」に変更される見込みです。詳細は以下を参照ください[2]。なお、制度要綱は9月に公表される予定です。
| 項目 | 内容 |
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見直し後の 上場維持基準 |
「上場10年経過後から、時価総額40億円以上」を「上場5年経過後から、時価総額100億円以上 」に変更 |
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適用時期 |
2030年以降、上場5年経過している企業に適用される予定 |
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スタンダード市場への市場変更 |
上述の上場維持基準に抵触する先のうち時価総額40億円以上の場合は、利益基準を満たさなくてもスタンダード市場への市場区分変更申請の対象 |
見直しの背景
東証の市場区分(プライム・スタンダード・グロース)において、グロースは、高い成長を目指すスタートアップが果敢なチャレンジを行う市場と位置付けられています。未来の日本経済の成長を牽引するスタートアップが1社でも多く生まれるためには、企業が、機関投資家の投資対象となり得る規模(100億円以上)へと早く成長する必要があるという考えのもと、上場基準の見直しをすることに至りました。
新規上場への影響
今回の見直しにより上場準備企業あるいは市場関係者の上場に対するモメンタムが低下する可能性が高いと言えます。昨年来、維持基準の引き上げの議論が具体的な数字も示されながら続いたことで、既に上場時期の先延ばしや上場を断念する上場準備企業も少なからずあるようです。このため今後グロース上場の企業規模(時価総額ベース)が大きくなる一方で上場件数は減少し、また、上場準備段階のM&Aが増加することが予想されます。
モメンタムの低下を避けたいという考えがあるからか、東証は基準の見直しとともにIPOに関するスタンスのスタートアップへの周知、高成⻑の実現に向けて取り組む企業のサポート・メリットの創出にも取り組むとしています。
今後の見通し
東証では市場区分の見直し後、投資家に魅力的でわかりやすくなるよう市場コンセプトの明確化を進めてきました。今後はスタンダード市場の方向性とプロマーケットの位置づけの整理を行うとしました。スタンダード市場に関しては、安定成⻑を目指す企業に適した市場となることを目指すとしています。
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