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財務モデリングの基本 1

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目次

不確実性が増す現代の経済社会において、適切に構築された財務モデルは経営上の意思決定において重要な役割を果たすものとなり得ます。しかし、「適切に」財務モデルを構築するためには、モデルを作成した人以外の誰もが操作しやすく、理解しやすいものとなるよう基本的な“お作法”を守る必要があると筆者は考えています。本稿では、財務モデルの果たす役割・目的をお伝えするとともに、財務モデルが備えるべき基本ルールについて概説します。

財務モデルの目的

財務モデルは、企業活動や投資対象の将来像を数値構造として可視化し、意思決定を支援するためのツールです。単なる予測表ではなく、複数の前提条件と財務諸表を連動させることで、意思決定に伴う結果とリスクを体系的に把握できる点に、その本質的な価値があると言えます。

財務モデルの有用性は、「不確実性を定量的に扱える」点に集約されます。売上高成長率、単価・数量、人員数、投資額、資金調達条件などの前提を変化させながら、利益やキャッシュ・フロー、財務健全性への影響を即座に確認できるため、単一の想定に依存しない判断が可能となります。これによって「うまくいった場合」だけでなく、「想定が外れた場合」の影響まで含めた検討が行えるようになり、意思決定の精度が大きく高まります。まとめれば、「シミュレーション可能」であり、「モデル利用者間のコミュニケーションに資する」という点が、財務モデルの特徴を表していると言えます。

財務モデルの利用場面

財務モデルは様々な場面で利用可能ですが、事業投資やM&Aの評価、インフラやエネルギーにおけるプロジェクトファイナンス、資金調達時の返済可能性の検証、新規事業や大型設備投資の採算検討など、その範囲は多岐にわたります。それぞれの利用場面でモデルが想定するタイムラインも、以下のように変化します。

インターバル 利用場面

年次

  事業計画策定

  M&Aにおける投資評価、LBOモデル

四半期

  プロジェクトファイナンス(インフラ、エネルギー分野など)

月次

  オペレーション管理、太陽光発電事業における投融資評価

 

財務モデルの構築手順

以下は、モデル構築の一般的な手順を示したものとなります。利用目的やプロジェクトのタイムラインなどによって異なりますが、とりわけ最初の段階である「モデル仕様書の合意」において、モデルを最終的に利用するメンバーとモデル構築担当者間で慎重に協議した上で、構築着手前に各項目について合意することが肝要です。3.	財務モデルの構築手順

 

財務モデルにおいて遵守すべき“お作法”

誰もが直感的に利用できるモデルを構築する上での“お作法”と言えるものが存在します。以下に示したものはあらゆるモデルに当てはまるものと言え、財務モデルを構築する上で必ず守るべきものです。 

ルール 概要

Keep simple

  できる限りシンプルな計算構造、数式の構築を心がけます。

  複雑で長い数式(例:IFの数珠繋ぎ)は回避する(異なる関数の利用を検討、もしくは計算構造を分解します)。

=IF(A2<60,"D",IF(A2<70,"C",IF(A2<80,"B",IF(A2<90,"A","A+"))))

ロジックを明確に

  計算構造は上から下、左から右に流れるように。

同一列には同一の数式

  読み手にとって計算構造が明確になるだけでなく、モデルレビューワ―にとっても、レビューが簡潔となります。

インプットは1か所に集約

  変数となるインプット(例:売上数量・単価、原価率、人員数、設備投資額など)は、1か所にまとめることで、利用者がシミュレーションする上で変化させるべき数値が明瞭になります。

  特定のセル背景色を設定することで、入力すべき箇所を明確にします。

数式にハードコードを組み込まない

  =BP45*100など。ハードコード数値の出自が利用者全てに明確とは限らない。

  月数(12)や年間の日数(365)など、共通言語として明確なものはOK

 

お見逃しなく!

財務モデルは、将来の不確実性を定量的に捉え、合理的な意思決定を支えるための重要なツールです。その価値を最大限に引き出すためには、分析の高度さ以上に、第三者にも理解・操作しやすい構造と基本的なルールを遵守することが欠かせません。本稿で示した目的や利用場面、構築時の“お作法”を意識することで、財務モデルは単なる予測表ではなく、経営判断に資する実践的なコミュニケーションツールとなり得ます。

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