タイ会計・税務ニュースレター

トップアップ税法:多国籍企業に対する主な影響とコンプライアンス要件

小平 正 Tadashi Kodaira
執筆者:
小平 正 Tadashi Kodaira
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本稿は、2025年4月のGrant ThorntonタイNewsletterにてご紹介したものになります。

タイにおける新たなトップアップ税法の影響とその要件について、現状、わかっている仕組み等を記載しております。実務上の具体的な相談事項等につきましては、別途、Grant Thornton Thailandにご相談頂けますと幸いです。

※本稿は、Grant Thornton Thailand(グラントソントン・タイ)が作成したものを、和訳・編集したものです。原文(英語)をご参照ください。

 

はじめに

タイ歳入局(“TRD”)は、「トップアップ税に関する非常事態命令[宣言] B.E.2567(2024年)」(以下「トップアップ税法」)を発表しました。本法は2025年1月1日より施行されています。以下に、本法の主要なポイントをまとめました。

 

1.  トップアップ税法の対象となるのは?

以下の条件に該当する多国籍企業(MNE)グループの構成事業体(CE)が対象となります:

  • 直近4会計年度のうち2会計年度以上で、最終親会社(UPE)の連結財務諸表において年間収益が7億5,000万ユーロ以上であること。

 

2.  トップアップ税法に基づく義務は?

TRDは、特に以下の点に注目しています。

1) 通知フォームの提出

  • 最終親会社(UPE)の名称およびGloBE情報申告書の提出を担当するCEを通知する必要があります。

2)GloBE情報申告書(GIR)の提出

  • タイ国内のCEは、最終親会社またはタイと適格な管轄当局間協定を有する国・地域に所在する指定提出事業体のいすれかが、報告事業年度についてすでにGIRを提出している場合、TRDへのGIR提出は免除されます。

3) トップアップ税申告書の提出

  • トップアップ税(国内ミニマム課税 (QDMTT)、所得合算ルール (IIR)、軽課税所得ルール (UTPR))を支払う義務のあるCEは、3年間の分割納付が可能です。また、過剰納付した場合には、3年以内に申請することで還付を受けることができます。

  • TRDへの提出期限は、UPEの会計年度終了日の15ヶ月以内です。なお、本法に基づいて初めてトップアップ税の対象となる会計年度に限り、3ヶ月の延長が認められ、18ヶ月以内の提出が可能です。

3.  トップアップ税法における課税の仕組み

1)  国外に対するトップアップ税

  • 所得合算ルール(IIR):有効税率が15%未満の国・地域に所在するMNEに対してトップアップ税を課す(一次ルール)。
  • 軽課税所得ルール(UTPR):IIRにより十分な税額が徴収されない場合にトップアップ税を課す(二次ルール)。

2)  国内に対するトップアップ税

  • 軽課税所得ルール(QDMTT):各国が独自の最低課税制度を導入し、国外でのトップアップ税が課される前に国内で最低税率に達するよう課税する制度。

4.  トップアップ税法に違反した場合の制裁措置

  • GIR未提出または期限までにトップアップ税を全額納付しなかった場合、追徴金(ケースによってトップアップ税不足額の100%または200%)、毎月1.5%の追徴金(トップアップ不足税額が上限)、罰金や禁錮などの刑事罰が課される可能性があります。

5.  税務職員の権限

  • 追徴課税の時効:申告期限から10年間
  • 召喚状および追徴課税査定:
    • GIRまたは申告書を提出済みの場合:提出日から5年間(最大でさらに2年延長可能)
    • 未提出の場合:10年間

6.  その他

なお、現時点では、申告書の提出方法、必要書類、トップアップ税申告書の様式などの詳細は明らかになっていません。今後、TRDから関連の二次法令等で詳細が発表される予定ですので、引き続きご注目ください。

より詳しい条件等につきましては、「トップアップ税に関する緊急勅令 B.E.2567(2024年)」英語版をご参照ください。

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