日本公認会計士協会より、『会計制度委員会報告第4号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」、同第6号「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」、同第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」、同第7号(追補)「株式の間接所有に係る資本連結手続に関する実務指針」、同第8号「連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」、同第9号「持分法会計に関する実務指針」、「土地再評価差額金の会計処理に関するQ&A」及び「金融商品会計に関するQ&A」の改正について』が公表されました。企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」等の改正に伴い、所要の見直しが行われたものです。
なお、本改正は、改正企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」を適用する連結会計年度から適用されます。
(主な改正内容)
子会社株式の取得原価に含まれる付随費用
1. 段階取得における取扱い
株式の段階取得により支配を獲得した場合、支配獲得前に保有していた株式にも支配獲得日の時価を付すため、当該株式の取得原価に含まれていた付随費用は段階取得に係る損益として処理される。
2. 税効果会計上の取扱い
取得とされた企業結合に係る付随費用を、個別財務諸表においては子会社株式の取得原価に含め、連結財務諸表においては発生した年度の費用とした場合、子会社への投資の個別財務諸表上の価額と連結財務諸表上の価額と差額は、連結財務諸表固有の一時差異に該当する。
3. 子会社株式の売却時における取扱い
個別財務諸表上の売却簿価に含まれている付随費用のうち、売却した部分に対応する額については、連結財務諸表上、個別財務諸表に計上した子会社株式売却損益の修正として取り扱う。
引き続き保有する部分に対応する額については、支配を喪失して持分法適用関連会社になった場合には、連結財務諸表上、関連会社株式の投資原価には支配喪失以前に費用処理した支配獲得時の付随費用を含めない。支配を喪失して連結子会社及び関連会社のいずれにも該当せず連結範囲から除外された場合には、連結株主資本等変動計算書上の利益剰余金の区分に連結除外に伴う利益剰余金減少高(又は増加高)等その内容を示す適当な名称をもって計上する。
複数の取引が一つの企業結合等を構成している場合の取扱い
複数の取得の取引が一つの企業結合等を構成しているものとして一体として取り扱われる場合、取得した持分に対するのれんも一体として計上されるため、追加取得した取引においてものれんが計上される。したがって、追加取得した持分に係るのれんの償却額は、当該のれんが支配獲得時に計上されていたものとして計算し、追加取得時において、支配獲得時から追加取得時までの償却分も含めて償却計算を行う。
子会社株式の一部売却に伴う子会社売却損益等の調整
1. 支配が継続している場合の取扱い
売却した株式に対応する持分を親会社の持分から減額し、非支配株主持分を増額するとともに、売却による親会社の持分の減少額(売却持分)と売却価額との間に生じた差額は、資本剰余金として処理する。売却価額には売却に係る支払手数料等は含まれないため、当該手数料等は売却時の費用として処理する。
売却した株式に対応する持分には、子会社のその他の包括利益累計額が含まれるが、売却持分には、その他の包括利益累計額は含まれない。
上記処理によって減少したその他の包括利益累計額は当期純利益を構成しないため、組替調整額の対象とはならず、連結株主資本等変動計算書における当連結会計年度の増減として表示する。
2. 支配を喪失し、関連会社となった場合の取扱い
子会社株式を一部売却する前の投資の修正額と、このうち売却後の株式に対応する部分との差額(その他の包括利益累計額を除く)を、個別財務諸表で計上した子会社株式売却損益の修正として処理する。
子会社のその他の包括利益累計額のうち、一部売却に係る部分については、子会社株式の一部売却により連結上の実現損益となるため、個別財務諸表で計上した子会社株式売却損益の修正には含めず、組替調整額の対象となる。
3. 投資の修正額
投資の修正額には、たとえば以下のものが含まれる。
- 取得後利益剰余金
- 取得後その他の包括利益累計額
- のれん償却累計額、負ののれん発生益、段階取得に係る損益、未実現損益の消去、付随費用
- 資本剰余金として処理された追加取得時の親会社の持分変動による差額
- 子会社株式を一部売却した際に減額されなかったのれんの未償却額
子会社の支配獲得後、支配が継続している間に子会社に対する親会社の持分変動が生じた場合、投資の修正額には、支配継続中に生じた親会社の持分変動による差額(資本剰余金)やのれんの未償却額が含まれることがある。この場合、その後に子会社株式の一部売却によって持分法適用関連会社となったときの投資の修正額は、売却前の投資の修正額を売却前後の親会社の持分比率によって按分することによっては算定できないことが考えられる。売却後の投資の修正額は、持分法による投資評価額(関連会社の資本に対する持分比率に対応する額及びのれんの未償却額)と個別財務諸表上の帳簿価額(付随費用を除く)の差額となる。
4. のれんの未償却額
支配獲得後に追加取得や一部売却等が行われたのち、子会社株式を一部売却して支配を喪失して関連会社になった場合におけるのれんの未償却額は、支配獲得後の持分比率の推移等を勘案し、のれんの未償却額のうち、支配獲得時の持分比率に占める関連会社として残存する持分比率に相当する額を算定する方法や、支配喪失時の持分比率に占める関連会社として残存する持分比率に相当する額を算定する方法などの中から、適切な方法に基づき算定する。
子会社株式の一部売却に伴う法人税等の調整
1. 子会社株式の一部売却に係る法人税等の取扱い
子会社株式の一部売却(支配を喪失する場合を除く)から生じた親会社の持分変動による差額(親会社の持分減少額と売却価額との差額)に係る法人税等相当額(売却に関連する法人税等(子会社への投資に係る税効果の調整を含む))については、「法人税、住民税及び事業税」を相手勘定として資本剰余金から控除する。法人税等相当額は、売却元の税金支払額等にかかわらず、原則として、親会社の持分変動による差額に法定実効税率を乗じて算定する。ただし、税金支払額が発生していない場合に資本剰余金から控除する額をゼロとするなど、他の合理的な方法によることもできる。
2. 子会社株式の一部売却に係る税効果会計上の取扱い
子会社株式の追加取得や時価発行増資等から生じた親会社の持分変動による差額(資本剰余金)は、子会社への投資に係る将来減算(又は加算)一時差異に該当し、子会社株式の一部売却(支配を喪失する場合を除く)を意思決定したこと等により、これに対して繰延税金資産(又は負債)を計上する場合、相手勘定を資本剰余金とする。
その後、子会社株式を売却した場合には、売却時に、当該一時差異の解消額に対応する繰延税金資産(又は負債)を取り崩し、対応する額は法人税調整額に計上する。
売却の意思決定と同一事業年度に売却が生じた場合には、子会社株式の追加取得や時価発行増資等から生じた資本剰余金の額の法人税等調整額に相当する額について、売却時に、「法人税、住民税及び事業税」を相手勘定として資本剰余金から控除する。なお、法人税等調整額に相当する額は、売却の意思決定時に繰延税金資産(又は負債)を計上した結果と同様になるように算定する。
親会社の持分変動に伴って計上される資本剰余金
1. 負の値となる資本剰余金の取扱い
資本剰余金が負の値となる場合には、連結会計年度末において資本剰余金をゼロとし、当該負の値を利益剰余金から減額する。
2. 支配喪失後の資本剰余金の取扱い
子会社に対する支配を喪失して連結範囲から除外する場合でも、子会社株式の追加取得及び一部売却等によって生じた資本剰余金は、引き続き、連結財務諸表上、資本剰余金として計上する。
為替換算調整勘定等
1. 支配が継続している場合の取扱い
子会社株式の一部売却等によっても支配が継続している場合、為替換算調整勘定のうち親会社の持分比率の減少割合部分である為替差損益相当額は資本剰余金に振り替え、連結貸借対照表に計上されている為替換算調整勘定のうち持分比率の減少割合相当額は取り崩し、非支配株主持分に振り替える
2. 支配を喪失した場合の取扱い
子会社株式の一部売却等によって支配を喪失した場合、為替換算調整勘定のうち持分比率の減少割合相当額は株式売却損益を構成し、連結損益計算書に計上する。
3. その他
退職給付会計に係る調整累計額は、決算時の為替相場による円換算額を付す。
持分法
1. 持分法非適用関連会社の処理
持分法非適用関連会社の取得関連費用の処理及び支配が継続している場合の親会社の持分変動による差額の処理については、連結子会社の会計処理に準じた処理又は関連会社と同様の取扱いのいずれもが認められる。
2. 付随費用の取扱い
持分法適用会社の株式を取得(又は追加取得)した場合、持分法適用非連結子会社について連結子会社の会計処理に準じた取扱いによる場合を除き、付随費用は株式の取得原価に含める。
3. 退職給付に係る調整累計額の取扱い
持分法適用会社の個別財務諸表において退職給付に係る調整累計額は計上されないが、投資会社が持分法適用会社に対する投資について持分法を適用する際には、投資の日(持分法適用日)以降における持分法適用会社の退職給付に係る調整累計額の変動額のうち、投資会社の持分又は負担に見合う額を算定して投資の額を増額又は減額する。
キャッシュ・フロー計算書
1. 取得関連費用の取扱い
支配獲得時に生じた取得関連費用に係るキャッシュ・フローは、「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載する。
2. 親会社の持分変動(支配が継続している場合)の取扱い
連結範囲の変動を伴わない子会社株式の購入又は売却に係るキャッシュ・フローは、当該変動に関連するキャッシュ・フロー(関連する法人税等に関するキャッシュ・フローを除く)を、非支配株主との取引として「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載する。
上記に関連して発生した費用に係るキャッシュ・フローは「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載する。
3. 適用初年度の取扱い
非支配株主との取引及び取得関連費用等に係るキャッシュ・フローの取扱いを適用するにあたっては、表示方法の変更に該当するが、比較情報の組替えは行わない。
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