企業会計基準委員会より、実務対応報告第30号「従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い」が公表されました。これは、従業員持株会に信託を通じて自社の株式を交付する取引等に関する会計処理及び開示について、当面の実務上の取扱いを明らかにしたものです。
(主な内容)
実務対応報告の対象範囲
従業員への福利厚生を目的として従業員持株会に信託を通じて自社の株式を交付する取引(以下、従業員持株会型という)、及び、従業員への福利厚生を目的として自社の株式を受け取ることができる権利(受給権)を付与された従業員に信託を通じて自社の株式を交付する取引(以下、株式給付型という)を対象とする。
個別財務諸表における処理
1. 自己株式処分差額の認識
信託に対して企業が自己株式を処分した場合、信託からの対価の払込期日に自己株式の処分を認識する。
2. 期末の会計処理(総額法)
信託に残存する自社の株式を、信託における帳簿価額(付随費用を除く)によって自己株式に計上する。
信託で発生した自社の株式の売却差損益、信託が保有する株式に対する配当金及び信託に関する諸費用の純額を、負債(純額で正の値になる場合)又は資産(純額で負の値になる場合)に計上する。
従業員持株会型の場合において、信託終了時に信託の資金が不足し、企業が債務保証を履行する可能性があるときには、引当金計上の要否を検討する。
信託が保有する自社の株式の帳簿価額は、企業が保有する自己株式の帳簿価額と通算しない。
企業と信託との間の取引(配当金など)は、相殺消去しない。
3. 従業員へのポイント割当等に関する会計処理(株式給付型)
従業員に割り当てられたポイントに応じた株式数に、信託が自社の株式を取得したときの株価を乗じた金額を基礎として、費用及び引当金を計上する。
従業員に株式が交付されたときには、当該引当金を取り崩す。
連結財務諸表における処理
個別財務諸表における総額法の処理をそのまま引き継ぎ、信託が企業の子会社又は関連会社に該当するか否かの判定を要しない。
1株当たり情報
総額法によって計上された自己株式は、期中平均株式数及び期末発行済株式総数の計算において控除する。
開示
連結財務諸表及び個別財務諸表において、以下の事項を注記する。ただし、連結財務諸表における注記と個別財務諸表における注記が同一となる場合、個別財務諸表の注記は連結財務諸表に当該注記がある旨の記載をもって代えることができる。
- 取引の概要
- 総額法によって計上された自己株式について、純資産の部に自己株式として表示している旨、帳簿価額及び株式数
- 借入金の帳簿価額
株主資本等変動計算書において、以下の事項を注記する。
- 当期首及び当期末において信託が保有する自社の株式数
- 当期において信託が取得又は売却、交付した自社の株式数
- 信託が保有する自社の株式に対する配当金額
適用時期
2014年4月1日以後開始事業年度の期首から適用する。ただし、2013年12月25日以後最初に終了する事業年度の期首又は四半期会計期間の期首から適用することができる。
経過措置
本実務対応報告適用初年度の期首(上記に従って四半期会計期間の期首から早期適用した場合には、当該四半期会計期間の期首)より前に締結された信託契約については、一定の事項を注記することで、従来採用していた方法を継続適用することができる。
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