日本公認会計士協会より、「会計制度委員会報告第4号『外貨建取引等の会計処理に関する実務指針』、同第12号『研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針』、同第14号『金融商品会計に関する実務指針』、『研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関するQ&A』、『金融商品会計に関するQ&A』及び『税効果会計に関するQ&A』の改正について」が公表されました。企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」及び企業会計基準第25号「包括利益の表示に関する会計基準」等の適用に対応するため、所要の見直しが行われたものです。
なお、実務指針の改正のうち、包括利益の表示に関連する部分は2011年3月31日以後終了連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表から、遡及処理に関連する部分は2011年4月1日以後開始事業年度の期首以後に行われる会計上の変更及び過去の誤謬の訂正から適用され(ただし、適用初年度より前の事業年度に行われた会計上の変更及び過去の誤謬の訂正については遡及処理しない)、その他の部分は2011年3月29日から適用されます。
(主な改正内容)
貸倒引当金の会計処理
1. 直接減額後の回収
貸倒見積高を債権から直接減額した後に、残存する帳簿価額を上回る回収があった場合、原則として営業外収益として当該期間に認識する。
2. 繰入額と取崩額の相殺表示
貸倒引当金繰入額と貸倒引当金取崩額と相殺し、取崩額の方が大きい場合は原則として営業費用又は営業外費用から控除するか営業外収益として当該期間に認識する。
その他有価証券に係る評価差額処理方法の変更
部分純資産直入法から全部純資産直入法への変更又は全部純資産直入法から部分純資産直入法への変更は、会計方針の変更に該当し、企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」に従って処理する。
遡及処理に係る税効果会計
1. 遡及適用に係る税効果会計
会計方針の変更に伴う遡及適用による会計上の資産又は負債の額の変更に対しては、表示される過去の各期間の財務諸表において、税効果会計を適用する。同様に、連結子会社又は持分法適用会社が会計方針を変更して留保利益が修正される場合には、留保利益に係る税効果の金額も修正する。
繰延税金資産の回収可能性の判断は会計上の見積りに該当するため、遡及適用に伴って将来年度の見積課税所得が変更される場合には、会計方針の変更を行った年度以降において、変更後の見積課税所得を前提に回収可能性を判断する。また、遡及適用によって会社分類が異なる状況になったとしても、過去の時点での回収可能性の判断は当該時点で最善の見積りを行った結果であり、また、本質的な将来年度の会社の収益力は会計方針の変更によって変わるものではないことから、過去の年度の回収可能性には影響させず、会計方針の変更を行った年度の損益に反映する。
2. 修正再表示に係る税効果会計
修正再表示による会計上の資産又は負債の額の修正に対しては、表示される過去の各期間の財務諸表において、税効果会計を適用する。同様に、連結子会社又は持分法適用会社が会計方針を変更して留保利益が修正される場合には、留保利益に係る税効果の金額も修正する。
修正再表示に伴って将来年度の見積課税所得や会社分類が修正される場合には、修正後の見積課税所得や会社分類を基礎として繰延税金資産の回収可能性を判断し、修正再表示を行う。
外貨建その他有価証券の換算差額、在外子会社等の評価・換算差額等及び外貨建その他有価証券に係る時価ヘッジの会計処理
純資産の部に計上される外貨建その他有価証券の換算差額の当期変動額、親会社の支配獲得後に生じた在外子会社等の評価・換算差額等に属する項目の円換算額による変動額及び純資産の部に計上される外貨建その他有価証券に係る時価ヘッジによる時価の変動額は、連結財務諸表上、その他の包括利益として連結包括利益計算書又は連結損益及び包括利益計算書に表示する。
ソフトウェアの減価償却方法
1. 市場販売目的ソフトウェアの見込販売数量(又は見込販売収益)の変更
市場販売目的ソフトウェアの減価償却方法に関連して、販売開始後に見込販売数量(又は見込販売収益。以下、同じ)を変更した場合、会計上の見積りの変更に該当する。したがって、当該変更による影響は、変更後の見込販売数量に基づき、当期及び将来の期間の損益で認識する。
ただし、過去に見積った見込販売数量が当該時点での合理的な見積りに基づくものではなく、これを事後的に合理的な見積りに基づくものに変更する場合、過去の誤謬の訂正に該当する。
2. 自社利用ソフトウェアの見込利用可能期間の変更
自社利用ソフトウェアの減価償却方法に関連して、利用開始後に見込利用可能期間を見直し、耐用年数を変更した場合、会計上の見積りの変更に該当する。したがって、当該変更による影響は、変更後の耐用年数に基づき、当期及び残存耐用年数にわたる将来の期間の損益で認識する。
ただし、過去に定めた耐用年数が当該時点での合理的な見積りに基づくものではなく、これを事後的に合理的な見積りに基づくものに変更する場合、過去の誤謬の訂正に該当する。
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