金融庁より、「国際会計基準(IFRS)に関する誤解」が公表されました。IFRSに関し、一部に「誤解」を招くような情報が流布しているとの指摘を踏まえ、IFRSに対する「誤解」と思われる事例を集め、理解が得られるよう説明をしたものです。
なお、本資料は正確性よりも分かりやすさに重点を置いて作成されています。
(主な内容)
全般的事項
誤解 | 実際 |
上場企業は直ちにIFRSが適用される |
2010年3月期から、一定の要件を満たす上場企業の連結財務諸表にIFRSを任意適用できる |
非上場会社にもIFRSが適用される |
非上場会社はIFRSを適用する必要はない |
ITシステムや業務プロセスの見直しが必要である |
既存のシステムの全面的な見直しは、必ずしも必要ではない |
IFRSはプリンシプル・ベースなので、適切な処理の検討について、社内の人材のみでは対応できない |
外部専門家に依頼しなければならないわけではない |
IFRSはプリンシプル・ベースなので、監査人の言うとおりにしないと監査意見がもらえない |
IFRSになったからといって、監査人の対応が厳しくなるわけではない |
英語版IFRSを参照して連結財務諸表を作成する必要がある |
日本語翻訳版IFRSを参照して連結財務諸表を作成することができる |
日本語と英語の両方で財務諸表を作成する必要がある |
英語で財務諸表を作成する必要はない |
監査も国際監査基準(ISA)に基づくこととなる |
我が国の企業は、日本の監査基準に基づく |
国際的な提携をしている大手監査法人しか監査ができない |
大手監査法人以外であっても監査はできる |
これまでと全く異なる内部統制を新たに整備しなければならない |
内部統制を全面的に見直す必要はない |
内部の業績管理や管理資料もIFRSベースにしなければならない |
企業独自の方法によることができる |
個別的事項
誤解 | 実際 |
IFRSは徹底した時価主義である |
公正価値(時価)評価しなければならない範囲は、現行日本基準と大きくは異ならない |
持ち合い株式の公正価値(時価)評価変動額を損益に計上しなければならず、業績(当期純利益)が大幅に悪化する |
持ち合い株式の公正価値(時価)評価変動額をその他の包括利益に計上する方法が選択でき、その場合、当期純利益が悪化することはない |
利益の表示が当期純利益から包括利益に変わる |
当期純利益は表示され、業績把握のために重要なものであることに変わりはない |
企業年金の積立不足額を即時費用処理しなければならないため、業績(当期純利益)が悪化し、年金財政も悪化・崩壊する |
現行IFRSでは、積立不足の増減に伴う数理計算上の差異について、一定額以上のみを平均残存勤務期間で均等償却する方法、その他の包括利益で即時に認識する方法等が選択できる |
出荷基準による売上計上が認められなくなる |
現行日本基準は実現主義であり、現行IFRSの収益認識基準に照らし合わせると、ほぼ同様の結果となることが多いが、プリンシプルに照らし、個々具体的な事例に即して適切に判断することとなる |
定率法が全く使えなくなる |
償却方法は、将来的な資産の経済的便益の消費パターンを反映したものを採用しなければならないとされるが、定率法と定額法の間に優劣はない |
金融庁ホームページ