日本経済団体連合会より、「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型」(改訂版)が公表されました。今回の改訂は、主に以下の関係法令及び会計基準等の改正等に伴うものです。
- 2009年3月27日及び4月20日の改正法務省令の施行
- 継続企業の前提に関する監査基準の改正
- 工事契約に関する会計基準等の改正
- 資産除去債務に関する会計基準の適用
- 賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の適用
- 金融商品に関する会計基準の改正
- 会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準等の適用
なお、本ひな型は、2009年4月1日以後終了事業年度に係る各種書類から適用されますが、関連する会計基準の適用時期によって、計算書類のひな型の適用時期が異なるものがありますので留意が必要です。また、あくまでも本ひな型は参考資料のひとつであって、実際に各種書類を作成する場合には、各社の事情に応じた適切な開示を実施する必要があります。
(主な改訂内容)
事業報告
1. 全般的事項
原則として、事業報告の対象となる事業年度に発生ないし変動した内容について記載し、事業年度末日以降に生じた事象については、重要な事項のみ適切な個所に記載すれば足りることが追記された。ただし、会社法施行規則に記載の基準日が定められているものや、事業報告作成時点における内容を記載することが適切と考えられるものもあることに留意する。
2. 直前3事業年度の財産及び損益の状況
会計方針の変更等により、過年度の財産及び損益の状況が過年度の定時株主総会において承認又は報告した損益及び財産の状況とは異なることとなった場合、当該修正を反映した事項を記載することができる(施規120)ことは従前より変更がないが、その具体的な修正方法については、企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針」に従うものとされた。
3. 対処すべき課題
事業報告作成時点のものを記載することが追記された。
4. 株主の状況
発行済株式総数(自己株式を除く)の10分の1以上の株式を有する株主の氏名又は名称、持株数を記載していたが、保有割合の上位10名の株主の氏名又は名称、持株数及び保有割合を記載することとされた。なお、保有割合を計算するに際しては、株主名簿における保有株式数を基準として算出するものとし、分母及び分子から自己株式は控除する。
5. その他株式に関する重要な事項
発行済株式の総数については、自己株式を含んだ総数を記載していたが、自己株式を控除した総数を記載するとともに、自己株式の総数を付記することとされた。
6. 会社役員の地位及び担当
固有の担当がない取締役にあっては担当の個所には特段の記載を要しないこと、及び、監査役にあっては固有の担当は存在しないと解されるため、担当の個所には特段の記載を要しないことが追記された。
7. 会社役員の報酬等の額又はその算定方法に係る決定方針
原則として、事業報告作成時点の方針を記載すれば足りることが再確認された。たとえば、事業報告の対象となる事業年度終了後、事業報告作成時までに方針を変更した場合、当該事業年度に在任していた会社役員に適用されないものであっても、変更後の方針を記載することが考えられる。
計算書類及び連結計算書類
1. 概要
各種関係法令及び会計基準等が改正されたことを受け、計算書類及び連結計算書類の以下の項目が追加又は改訂された。
- 連結損益計算書記載例における「少数株主損益調整前当期純利益」の追加
- 継続企業の前提に関する注記の改訂
- 収益及び費用の計上基準の追加
- 持分法損益等に関する注記の追加
- 金融商品に関する注記の追加
- 賃貸等不動産に関する注記の追加
- 開示対象特別目的会社に関する注記の追加
2. 少数株主損益調整前当期純利益
2010年4月1日前開始事業年度に係る連結損益計算書において、改正後の会社計算規則を早期適用して「少数株主損益調整前当期純利益」を表示する場合の記載例が追加された。
3. 収益及び費用の計上基準
収益及び費用の計上基準は、従来、「その他計算書類作成のための基本となる重要な事項」(個別)の中で必要に応じて記載されていたと考えられるが、新たに「収益及び費用の計上基準」として別建てした記載例が追加された。また、「その他連結計算書類の作成のための基本となる重要な事項」(連結)の中でも別建てした記載例が追加された。
日本経済団体連合会ホームページ(PDF)