持分プーリング法の廃止
1.従来の取扱い
共同支配企業の形成及び共通支配下の取引以外の企業結合のうち、持分の結合と判定されたものは持分プーリング法により処理する。
2.改正内容(企業結合会計基準17項)
共同支配企業の形成及び共通支配下の取引以外の企業結合は取得となり、パーチェス法により処理する。 したがって、現行の会計基準では持分の結合に該当する企業結合であっても、共同支配企業の形成に該当する場合を除き、いずれかの結合当事企業を取得企業として決定しなければならないこととなる。
取得企業の決定方法
1.従来の取扱い
対価の種類が議決権のある株式以外である企業結合の場合は、対価を支出した企業を取得企業とする。
対価の種類が議決権のある株式である企業結合で取得と判定された場合は、議決権比率が大きいと判定された結合当事企業を取得企業とする。
議決権比率が等しいと判定された場合は、それ以外の支配関係の存在を示す一定の事実から支配を獲得したと判定された結合当事企業を取得企業とする。
結合当事企業が3社以上である場合には、議決権比率が最上位の結合当事企業と議決権比率が等しいと判定されたすべての結合当事企業について判定手続きを実施し、取得企業を決定する。
2.改正内容(企業結合会計基準18項から22項)
連結会計基準により、他の結合当事企業を支配することとなる結合当事企業が明確である場合には、原則として、当該結合当事企業が取得企業となる。 しかし、取得企業が明確とならない場合には、以下の要素を考慮して決定する。
(1) 主な対価の種類として、現金もしくは他の資産を引き渡す又は負債を引き受ける場合
通常、現金もしくは他の資産を引き渡す又は負債を引き受ける企業が取得企業となる。
(2) 主な対価の種類が株式(出資を含む)である企業結合の場合
通常、株式を交付する企業が取得企業となる。
ただし、株式を交付した企業が取得企業とはならないとき(逆取得)もあるため、対価の種類が株式である場合は、次のような要素を総合的に勘案して取得企業を決定する。
(ア) 総体としての株主が占める相対的な議決権比率の大きさ
ある結合当事企業の総体としての株主が、結合後企業の議決権比率のうち最も大きい割合を占める場合には、通常、当該結合当事企業が取得企業となる。 なお、議決権の内容や潜在株式の存在についても考慮する必要がある。
(イ) 最も大きな議決権比率を有する株主の存在
結合当事企業の株主又は株主グループのうち、ある株主又は株主グループが、結合後企業の議決権を過半には至らないものの最も大きな割合を有する場合であって、 当該株主又は株主グループ以外には重要な議決権比率を有していないときには、通常、当該株主又は株主グループのいた企業結合当事企業が取得企業となる。
(ウ) 取締役等を選解任できる株主の存在
結合当事企業の株主又は株主グループのうち、ある株主又は株主グループが、結合後企業の取締役会その他これに準ずる機関 (重要な経営事項の意思決定機関)の構成員の過半数を選任又は解任できる場合には、通常、当該株主又は株主グループのいた結合当事企業が取得企業となる。
(エ) 取締役会の構成
結合当事企業の役員もしくは従業員である者又はこれらであった者が、結合後企業の取締役会その他これに準ずる機関 (重要な経営事項の意思決定機関)を事実上支配する場合には、通常、当該役員又は従業員のいた結合当事企業が取得企業となる。
(オ) 株式の交換条件
ある結合当事企業が他の結合当事企業の企業結合前における株式の時価を超えるプレミアムを支払う場合には、通常、当該プレミアムを支払った結合当事企業が取得企業となる。
(3) 結合当事企業のうち、いずれかの企業の相対的な規模(たとえば総資産額、売上高あるいは純利益)が著しく大きい場合
通常、相対的な規模が著しく大きい結合当事企業が取得企業となる。
(4) 結合当事企業が3社以上である場合
上記に加え、いずれの企業がその企業結合を最初に提案したかについても考慮する。
株式を取得の対価とする場合の当該対価の時価の測定日
1.従来の取扱い
市場価格のある取得企業(又は分離先企業)の株式が取得の対価(又は受取対価)として交付される場合における取得の対価(又は受取対価)となる財の時価は、 原則として、その企業結合(又は事業分離)の公表日前の合理的な期間における株価を基礎にして算定する。
2.改正内容(企業結合会計基準24項、事業分離等会計基準13項、34項)
取得の対価(又は受取対価)となる財の時価は、原則として、企業結合日(又は事業分離日)における時価を基礎として算定する。
負ののれんの会計処理
1.従来の取扱い
20年以内の取得の実態に基づいた適切な期間で規則的に償却する。
2.改正内容(企業結合会計基準33項、適用指針78項)
発生した事業年度の利益として処理し、原則として特別利益に計上する。
ただし、負ののれんが生じると見込まれる場合には、まず、すべての識別可能資産及び負債が把握されているか、また、それらに対する取得原価の配分が適切に行われているかどうかを見直す必要がある。
少数株主持分の測定
1.従来の取扱い
連結財務諸表の作成にあたり、子会社の資産及び負債は、部分時価評価法と全面時価評価法のいずれかの方法で評価する。
2.改正内容(連結会計基準20項、持分法会計基準26-2項)
連結財務諸表の作成にあたり、子会社の資産及び負債は、全面時価評価法によって評価する。
なお、持分法を適用する関連会社については従来どおり部分時価評価法により、原則として投資日ごとに当該日における時価によって評価する。
段階取得における会計処理
1.従来の取扱い
取得が複数の取引により達成された場合(段階取得)における被取得企業の取得原価は、支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額による。
2.改正内容(企業結合会計基準25項、連結会計基準23項(1))
(1) 基本的な取扱い
(ア) 個別財務諸表
従来どおり、支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額を、被取得企業の取得原価とする。
(イ) 連結財務諸表
支配を獲得するに至った個々の取引すべての企業結合日における時価を、被取得企業の取得原価とする。
連結財務諸表における被取得企業の取得原価と、支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額(持分法適用関連会社と企業結合した場合には、持分法による評価額)との差額は、 当期の段階取得に係る損益として処理する。
(2) 吸収合併(適用指針46項、46-2項)
吸収合併存続会社(取得企業)の株式が交付され、吸収合併存続会社が吸収合併直前に吸収合併消滅会社(被取得企業)の株式を保有していた場合の取得の対価
(ア) 個別財務諸表
吸収合併存続会社が交付する吸収合併存続会社の株式の時価と合併期日の吸収合併消滅会社の株式の帳簿価額を合算して算定する。
(イ) 連結財務諸表
吸収合併存続会社が交付する吸収合併存続会社の株式の時価と吸収合併直前の吸収合併消滅会社の株式の時価を合算して算定する。
吸収合併直前の吸収合併消滅会社の株式の帳簿価額(持分法適用関連会社と企業結合した場合には、持分法による評価額)と合併期日の時価との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理する。
(3) 株式交換(適用指針110項、116項(1))
取得とされた株式交換で、株式交換完全親会社が、株式交換日の前日に株式交換完全子会社となる企業の株式を有していた場合の当該株式
(ア) 株式交換完全親会社の個別財務諸表
株式交換日の前日の適正な帳簿価額により、取得原価とする。
(イ) 株式交換完全親会社の連結財務諸表
株式交換日の時価に基づく額を、取得原価に加算する。
時価と適正な帳簿価額(持分法適用関連会社と企業結合した場合には、持分法による評価額)との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理する。
(4) 株式移転(適用指針123-3項、124項(2))
取得とされた株式移転で、株式移転完全子会社(取得企業)が株式移転日の前日に他の株式移転完全子会社(被取得企業)となる企業の株式を有していた場合の当該株式
(ア) 株式移転完全子会社の個別財務諸表
株式移転日の前日の適正な帳簿価額により、取得原価とする。
(イ) 株式移転設立完全親会社の連結財務諸表
株式移転日の時価に基づく額を、取得原価に加算する。
時価と適正な帳簿価額(持分法適用関連会社と企業結合した場合には、持分法による評価額)との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理する。
(5) 逆取得となる株式交換(適用指針118-4項、119項(1))
株式交換完全子会社(取得企業)が株式交換日の前日に株式交換完全親会社(被取得企業)となる企業の株式を保有していた場合の当該株式
(ア) 株式交換完全子会社の個別財務諸表
株式交換日の前日の適正な帳簿価額により、取得原価とする。
(イ) 株式交換後の連結財務諸表
株式交換日の時価に基づく額を、取得原価に加算する。
時価と適正な帳簿価額(持分法適用関連会社と企業結合した場合には、持分法による評価額)との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理する。
(6) 事業分離(受取対価が分離先企業の株式のみである場合(事業分離等会計基準18項、適用指針99項)、受取対価が現金等の財産と分離先企業の株式である場合(事業分離等会計基準24項、適用指針104項))
事業分離により分離先企業が新たに分離元企業の子会社となる場合において、分離元企業が事業分離前に分離先企業の株式を保有していた場合の当該株式
(ア) 分離元企業の個別財務諸表
事業分離日の前日の適正な帳簿価額により、取得原価とする。
(イ) 分離元企業の連結財務諸表
事業分離日の時価に基づく額を、取得原価に加算する。
時価と適正な帳簿価額(持分法適用関連会社と企業結合した場合には、持分法による評価額)との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理する。
(7) 結合当事企業の株主(被結合企業の株主)に係る会計処理(適用指針281-2項)
子会社や関連会社以外の投資先を被結合企業とする企業結合において、企業結合前に、被結合企業の株主が被結合企業の株式(その他有価証券)に加え結合企業の株式 (子会社株式又は関連会社株式)も有していることから、当該被結合企業の株主としての持分比率が増加し、結合後企業が当該株主の子会社となる場合の当該結合企業の株式
(ア) 個別財務諸表
企業結合日の前日の適正な帳簿価額により、子会社株式に振り替える。
(イ) 連結財務諸表
企業結合日の時価に基づく額を、取得原価に加算する。
時価と適正な簿価との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理する。
(8) 結合当事企業の株主(結合企業の株主)に係る会計処理(適用指針293-2項)
子会社や関連会社以外の投資先を結合企業とする企業結合において、企業結合前に、結合企業の株主が結合企業の株式(その他有価証券)に加え被結合企業の株式 (子会社株式又は関連会社株式)も有していることから、当該結合企業の株主としての持分比率が増加し、結合後企業が当該株主の子会社となる場合の当該結合企業の株式
(ア) 個別財務諸表
企業結合日の前日の適正な帳簿価額により、子会社株式に振り替える。
(イ) 連結財務諸表
企業結合日の時価に基づく額を、取得原価に加算する。
時価と適正な簿価との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理する。
企業結合により受け入れた研究開発の途中段階の成果の会計処理等
1.従来の取扱い
被取得企業から受け入れた資産に識別可能な無形資産が含まれる場合には、取得原価を当該無形資産等に配分することができる。
また、取得企業が取得対価の一部を研究開発費等(ソフトウェアを含む。)に配分したときは、当該金額を配分時に費用処理する。
2.改正内容(企業結合会計基準28項及び29項、研究開発費会計基準の一部改正2項、適用指針59-2項及び367-2項)
被取得企業から受け入れた資産に識別可能な無形資産が含まれる場合には、原則として資産計上する。
また、研究開発費等に配分された取得対価の費用処理は廃止し、被取得企業から受け入れた資産(受注制作、市場販売目的及び自社利用のソフトウェアを除く)は 研究開発費等に係る会計基準及び同注解の適用対象外とする。なお、研究開発の途中段階の成果を資産として識別した場合には、当該資産は企業のその後の使用実態に基づき、 有効期間にわたって償却処理する。ただし、研究開発が完成するまでは当該無形資産の有効期間は開始しないことに留意する。
その他
1.在外子会社株式の取得等により生じたのれんの会計処理(適用指針77-2項)
在外子会社株式の取得等により生じたのれんは従来、発生時の為替相場で換算されていたが、改正後は、在外子会社等の財務諸表項目が外国通貨で表示されている場合には、当該外国通貨で把握し、 決算日の為替相場により換算する。なお、当該外国通貨で把握されたのれんの償却額については、当該在外子会社等の他の費用と同様に換算する。
2.共同支配投資企業における、共同支配企業に対する投資の連結財務諸表上の会計処理(企業結合会計基準39項(2)、適用指針190項)
共同支配投資企業は従来、共同支配企業に対する投資について持分法に準じた処理方法を適用していたが、改正後は持分法を適用する。 したがって、共同支配企業に対する投資の取得原価と共同支配企業の資本のうち共同支配投資企業の持分比率に対応する部分との差額は従来、 処理されず、のれん(又は負ののれん)及び持分変動差額は生じなかったが、今後は処理されることとなる。
3.企業結合に係る特定勘定の計上及び取崩の処理(企業結合会計基準30項、適用指針62項から66項)
取得後に発生することが予測される特定の事象に対応した費用又は損失であって、その発生の可能性が取得の対価の算定に反映されている場合には、 従来、負債(企業結合に係る特別勘定)として認識することができるとされていたが、改正後は認識することが必要とされた。
さらに、当該事象が取得の対価の算定に反映されていることが、企業結合日現在の事業計画等により明らかであり、 かつ、金額が合理的に算定できる場合にも、計上されることとなった。ただし、この場合には、のれんが発生しない範囲で評価した額に限られる。
従来は企業結合日後5年以内に発生するものであることが条件とされていたが、改正後はこのような限度期間がなくなった。
4.連結損益計算書における純損益計算の区分の表示(連結会計基準39項(3))
税金等調整前当期純利益に法人税額等を加減したものを、新たに少数株主損益調整前当期純利益として表示し、これに少数株主損益を加減することで当期純利益を表示することとされた。
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