日本公認会計士協会より、「業種別監査委員会報告第27号『建設業において工事進行基準を適用している場合の監査上の留意事項』の改正について」が公表されました。主な改正内容は、以下のとおりです。
- 「工事契約に関する会計基準」等の公表に伴う用語の修正
- 現行の監査基準委員会報告書等を踏まえた新しいリスクモデルへの対応
- リスク評価手続及びリスク対応手続等の整理・見直し
なお、本委員会報告は「工事契約に関する会計基準」及び「工事契約に関する会計基準の適用指針」を適用した事業年度から適用されます。
(主な内容)
リスク評価手続を実施するに当たっての留意事項
(1)統制環境
工事進行基準による収益計上は多くの見積作業に基づいており、経営者等の財務報告に対する考え方に大きく影響を受けるため、以下のような内部統制を評価する必要がある。
- 工事の施工管理及び損益管理に関する経営組織及び人的構成
- 工事の施工管理及び損益管理に関する規程類の整備状況
- 工事の施工管理及び損益管理に用いる情報技術及び情報システム
- 工事の施工管理及び損益管理に対する工事所管部門、取締役会、監査役及び内部監査部門の
モニタリング状況
- 過去の見積りの精度あるいは見積修正の頻度
(2)工事収益総額の見積り
請負金額は工事内容の変更や物価等の変動により変更されることがあるため、以下のような内部統制を評価する必要がある。
- 受注計上に関する業務手続
- 認識の単位の決定に関する業務手続
(3)工事原価総額の見積り
工事原価総額の見積りは一般的には実行予算の作成により行われるが、実行予算は工事原価の見積りの詳細な積上げにより作成され、適時・適切に見直される必要があるため、以下のような内部統制を評価する必要がある。
- 実行予算の作成手続及び承認手続
- 予算実績管理の体制
- 適時・適切な工事原価総額の見積りの見直しの体制
(4)決算日における工事進捗度の見積り
原価比例法を採用する場合においては、工事原価発生額を、工事契約における施工者の履行義務全体との対比において工事進捗度を合理的に示すように把握しなければならないため、以下のような内部統制を評価する必要がある。
- 外注費等の支払に当たっての出来高査定の体制
- 請求書締切日から決算日までの出来高及び支払留保金等の調整の体制
- 前渡金に関わる管理体制
リスク対応手続(実証手続)を実施するに当たっての留意事項
工事進行基準の適用は建設工事の特性から虚偽の表示が起こりやすいため、実証手続を実施するに当たっては、内部統制の有効性の評価を慎重に考慮し、虚偽表示のリスクに対応して以下のような事項に留意する必要がある。
- 進行基準適用工事に関する基礎資料は十分かつ最新か
- 進行基準適用工事に関する基礎資料の数値に虚偽や異常と認められるものがないか
- 工事契約に係る認識の単位が実質的な取引の単位を適切に反映しているか
- 設計変更等による追加工事の契約書がない場合、合理的に請負金額の見積りができ、
かつ当該金額について発注者の実質的合意があるか
- 実行予算を合理的に作成し、適時・適切に見直しているか
- 工事進行基準を適用した工事の各期の損益率や工事進捗度に異常性はないか
- 工事損失引当金が適切に計上されているか
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