• 富士フィルムの AMP 支出に関する判断

富士フィルムの AMP 支出に関する判断

インド・ジャパン・ニュースレター 2018年4月号

 

インド支店の本国本店ブランド構築活動への移転価格税制の適用に関するデリー税務裁判所の判断-富士フィルム社のケース

 

 富士フィルム社のインド支店が提起した移転価格税制に関する税務訴訟において、デリー税務裁判所 (Income Tax Appellate Tribunal:ITAT)は、インド支店が行う日本本店ブランドのブランド構築活動について、移転価格税制の対象であり、インド支店の課税所得には当該ブランド構築活動に係る独立企業間価格が考慮されるべきである、との判断が示されました (TS-224-ITAT-2018(DEL)-TP)。

 今回の富士フィルム社のケースで移転価格調査官 (Transfer Pricing Officer:TPO) は、インド支店は「FUJI」ブランドの販促のために多額の広告販促マーケティング (Advertising, Marketing and Promotion:AMP) 支出を負担しており、ブライトラインテストによる移転価格調整をするべきだと指摘しています。なお、ブライトラインテストとは、数値基準を用いた線引きをいい、AMP支出の論点においては、特に多額のAMP支出が見られる場合に、例えば比較対象企業の売上とAMP支出の割合を算定し、この比較対象割合を超えるAMP支出を非経常的支出として本国本社のブランド構築のために支出した部分であると当局が指摘することがあります。

 富士フィルム社は、インド支店は本国本店の延長としてのインド拠点であり、本国本店とインド支店の取引は同一企業内の自身に対する取引であるため、移転価格税制は適用されない旨を主張しましたが、今回のITATの判断ではこれは明確に否定された形です。

 また、AMP支出について、インド拠点が行う本国本社のブランドを用いたAMP活動は、インドにおける本国本社に対するブランド構築活動であり、移転価格上の国際関連者間取引であるため、独立企業間価格でその対価を得るべきである、という判断は、他のいくつかのケースでも示されています。その際にはブライトラインテストによる移転価格調整が指摘されることがありますが、別のケースの判決では、国際関連者間取引があったかどうかはブライトラインテストの結果とは別の問題であり、ブライトラインテストの結果AMP支出が比較対象割合を超えているからといってその超過部分を国際関連者間取引とみなすことは不適当である、という判断が示されています。

 今回の富士フィルム社のケースでは、ITATは本支店間の取引には移転価格税制が適用されることを明確化する一方、AMP支出に係る移転価格調整についてはTPOに判断を差し戻し、本支店間のブランド構築活動に係る国際取引があるといえるのかどうか、また、ある場合にはその独立企業間価格を示すよう指摘しています。なお、インド支店のAMP支出の損金処理については、それを否定するものではない旨も示されています。

 今回のITATの判断は、これまでの類似の判例と整合した内容であると考えられ、本支店間の取引であっても移転価格税制の対象となること、また、AMP支出に関するブライトラインテストの適用と国際取引の有無の判断は別の問題であることが改めて示されているといえます。今後も多額のAMP支出については移転価格上の論点となると考えられますので、引き続き留意すべきであるといえます。

   

< 執筆者情報>

花輪 大資(はなわ だいすけ) 公認会計士(日本)

2013 年、太陽有限責任監査法人よりグラントソントン・インディアに出向し、ジャパンデスクを担当。

E-mail:daisuke.hanawa@in.gt.com

 

< グラントソントン・インディア>

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